VIVA LA ROCK 2019

5.3 FRI 13:50-14:30 STAR STAGE
SUPER BEAVER

そこにいる一人ひとりに向けて
捧げられた「ありがとう」の歌

「音楽で何が一番退屈かって俺は知ってるんだ。音楽でひとつになろうぜとか一体感とか、微塵も興味がない。俺たちはあなた一人ひとりに歌っている。束になってかかって来られちゃ困るんだ」

SUPER BEAVERの音楽が、無条件に胸に迫る理由は、渋谷龍太(Vo)が、この日、“秘密”を演奏する前にステージで放ったこの言葉に集約されているように思う。目の前にいる大勢のオーディエンスをひとかたまりとして音楽を投げかけるのではなく、一人ひとりに向かって強く練られた言葉を、音を届ける。
 
「何を綺麗事を」と思って観ていた人も中にはいただろう。だが、SUPER BEAVERのパワーには決して抗えないのだ。なぜならば、彼らは今日この場所にいた誰にも負けない覚悟と本気で、一人ひとりと対峙できると信じている。その熱の高さ、思いの純度の高さは、ここに集まる音楽リスナーであれば、絶対に感じ取ってしまう類のものなのだ。

ロックンローラー然としたグラマラスな振る舞いで、優雅にステージにまろび出てきた渋谷は、まずオーディエンスに手招きをして歓声をねだる。「レペゼン・ジャパニーズ・ポップ・ミュージック!」と宣言して始まったのは“美しい日”。「愛すべきあなたのお手を拝借!」という渋谷の呼びかけに応じて、会場からは完璧なハンズ・クラップが巻き起こる。
 
年間100本以上のライヴを敢行し、ライヴハウスを自らのホームと公言してやまないSUPER BEAVER。「できることならここにいる人たちをみんなライヴハウスに連れて行きたいなと思ってここに立っています」と信念と野望を語りながらも、ライヴハウスでのライヴと何ら熱量に遜色のないステージングをみせる。

「VIVA LA ROCKとは個人的に少しいろいろありまして、もしかしたらもう二度と出してもらえないなって思っていた時期もありましたけど、こんなふうに一番大きなステージに出してもらって嬉しいです。VIVA LA ROCKと、目の前のあなたに捧げます。もう勝手に仲間だと思ってるので、仲間の前ではバチバチにカッコつけさせてもらいます」

ごまかしのない言葉と共に披露されたのは“正攻法”。「やろうぜ、行けるか? 飛び跳ねろ!」と柳沢亮太(Gt)が煽れば、渋谷も「埼玉、眠ってんのか?」「そろそろ起きただろ!」などと刺激的な言葉を放ちながら、観客を挑発していく。

会場のヴォルテージも上がってきたところで、ドロップされたのは“秘密”。メンバー紹介に加えて、会場にいるオーディエンスも含めてSUPER BEAVERだと宣言する渋谷。メンバーなんだから一人ひとりが声を出せとばかりにコール&レスポンスを求める。「もっと、もっと!」と求める呼びかけに応じて、オーディエンスの歌声もどんどん大きくなっていく。最後はアリーナ全体を震わせる響きとなって会場を揺らしていた。

続く“予感”では、藤原”30才”広明(Dr)と上杉研太(Ba)の奏でる四つ打ちのビートがフロアを躍らせる。「正解っぽいものも、教科書っぽいものもひとまず置いておいたその先で、一体何を指針に生きるのか。自分が思っていることを信じるしかないだろ」とらんらんと光るまなこでオーディエンスひとりひとりを見つめながら、そう言い放った渋谷。ライヴの盛り上がりは最高潮へと達していく。ここにいる一人ひとりが、SUPER BEAVERとそれぞれのやり方で向き合っているというのを感じる。

「平成から令和に変わるときに、いいことだけ持っていくことなんかそもそも無理でしょう。ムカつくこととか、絶対やっちゃダメだけど誰かを殺したいって思う気持ちとか、どんな想いもあなたしか抱くことができなかった大事な財産です。誰が決めた節目か知らないけれど、自分を見つめ直す機会になったらいいね。最後の曲はいつかは絶対にいなくなってしまうあなたの大事な人にあなたが伝えなければ意味がない言葉を俺らは、紛れもなく目の前のあなたに歌って帰ろうと思います」

ネガティヴな感情も、ポジティヴな感情も、全部かけがえのないものだと肯定して、諸々を抱えながらもそこにいる目の前にいる大切なあなたに「ありがとう」と、伝える——そんな、人類愛の局地とも言える言葉を松明のようにかざして、ピンスポットライトを後光のように背負いながら渋谷は朗々と歌い始めた。最後に演奏されたのは、“ありがとう”。シンプルだが、すべてを許し、愛する魔法の言葉をただただまっすぐに「あなたが私の大切な人だよ」と捧げる、SUPER BEAVERの音楽は最初から最後まで、どこまでも真摯だった。

テキスト=小田部 仁

セットリスト

1. 美しい日
2. 閃光
3. 正攻法
4. 秘密
5. 予感
6. ありがとう

撮影=釘野孝宏

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