VIVA LA ROCK 2019

5.6 MON 19:30-20:30 STAR STAGE
東京スカパラダイスオーケストラ

道なき道を30年走り続けた先に待ち受けていたのは
誰しもが憧れるロックの夢と希望だった

「東京スカパラダイスオーケストラ」と描かれたメジャーデビュー作『スカパラ登場』は、もうそのジャケットの時点で衝撃だった。「東京」を冠するという、作品がリリースされた90年当時にはかなり大胆だったバンド名――レコード屋であのジャケを発見したときの光景は今でもはっきりと覚えている。彼らのデビューは、当時まだ一般に馴染みの薄かった「スカ」というジャンルを広める大きな一歩となった。世代によって彼らとの出会いのタイミングは異なるだろうが、彼らをきっかけにスカという音楽を知った人は多いはずだし、彼らの存在がなければ日本のスカシーン、いや音楽シーンはどうなっていたかわからない。

彼らが影響を与えたのは国内の音楽シーンだけではない。海外の音楽フェスで観客をどっかんどっかん沸かせている姿は、多くの国内ミュージシャンに夢と希望を与えた。海外での愛称は「TOKYO SKA」――世界が認める東京発のスカバンドへと彼らはのし上がったのである。

そんなスカパラがデビュー30周年を迎えた。数々の困難を乗り越えながら試行錯誤を繰り返し、道なき道を突き進み、今日という日に辿り着いた。そんな彼らに今年、ビバラからSTAR STAGEの大トリがオファーされたのは、主催者だけでなく、ビバラを愛するロックファンの総意と言ってもいいのではないか。

そんな思いにバンドも最大限の情熱で応えてくれた。キュウソネコカミ、MAH(SiM)、TAKUMA(10-FEET)、猪狩秀平&YUJI&満&かなす&イイカワケン(HEY-SMITH)、GEN(04 Limited Sazabys)という豪華なゲスト陣の出演が事前に発表されたのである。彼らがどんなタイミングで現れるのか、そして、スカパラはどんなスペシャルなパフォーマンスを見せてくれるのか――観客全員が期待に胸を膨らませてその時を待った。

「Are you ready for TOKYO SKA!?」という声とともにSEが流れ、白いスーツでビシッときめた9人の侍が登場。そして鳴らすは“Samurai Dreamers”。そこにさっそくTAKUMA(10-FEET)が現れ、谷中敦(Baritone sax)とエアーチャンバラを繰り広げたあと、息の合ったツインヴォーカルで見事なスタートダッシュを決める。最初からこれかよ!

「楽しみにしてたぜ! スカパラ30周年! 闘うように楽しんでくれよー!」と叫ぶ谷中に続いて、GAMO(Tenor sax)がフロアを煽りまくり、“Paradise Has No Border”のあの印象的なイントロを吹き鳴らす。そして、「今日、この会場で一番盛り上がってるところはどこだ!?」とGAMOが大声で呼び掛けると、沖祐市(Key)、大森はじめ(Per)、茂木欣一(Dr)以外の6人がステージ上手の端、下手の端へと移動し、見事なフォーメーションで演奏をきめる。そして最後はセンターへ。もう、この画が最高にカッコいい!

3曲目からはトリビュート盤『楽園十三景』に参加したミュージシャンが続々登場。まずはHEY-SMITHから猪狩秀平&YUJI&満&かなす&イイカワケン。この2バンドのメンバーが一列に並ぶ様は壮観のひと言。この大所帯で鳴らしたのは“Glorious”。ホーン隊のソロ回しも含めて、本当に楽しい! 音楽の自由さや楽しさがこの数分間に凝縮されていた。もう楽しいを通り越して、感動で涙が出そうになる。

「STAR STAGEはこれから『オールスターステージ』に変わるぜー!」という谷中の宣言のあとは、先ほどの楽しげなムードから一転、不穏なサウンドが鳴り響くなか、加藤隆志(G)が招き入れたのはMAH(SiM)! 歌うはSiM“GUNSHOTS”のカバーだ。さきほどステージを終えたばかりだが、MAHのイキイキとしてること! “GUNSHOTS”でモンキーダンスをかましたあとはモンキー・パンチに捧げる“ルパン三世”! これまでにたくさんのミュージシャンがこの名曲をカバーしてきたが、スカパラバージョンが世界一だろ!

茂木欣一(Dr)の「まだまだもっと楽しませるから! この楽しさを歌に変えさせてください!」という曲紹介から始まった2003年のヒット曲“銀河と迷路”では、始めはパワフルなドラムプレイを聴かせながら茂木が爽やかな歌声を響かせていたが、途中からはなんとつい2時間前まで同じステージに立っていたGEN(04 Limited Sazabys)が登場し、楽曲に新たな息吹を与えた。

MCでは谷中がバンドの30年の歴史を振り返った。自分が信じたように生きていくしかないけど、うまくいかないことのほうが多い。でも、自分が思うような方向に進めないとき、スカパラのメンバーからいたからここまで来れたんだと思う、という趣旨の思いを打ち明けた。そして、30年間休むことなく活動を続けてきたからこそ、ライヴを続けてきたからこそ、今、ここにいられると思います、と穏やかな表情で谷中が語ると、フロアからは温かい拍手が贈られ、感極まった谷中はそっと目を拭った。

そんな感動的なシーンのあとに“メモリー・バンド”のゲストとして現れたのは、黒のスーツに身を包んだキュウソネコカミの面々。そして、メンバー全員でこの名曲を歌い上げた。もちろん、歌が上手くないメンバーもいるが、全員が心のこもった歌を届けた。そんな姿に胸が熱くなる。しかし、そんな感慨をぶち壊したのは、曲中で「キュウソネコカミとひとつになれて、最高に幸せです!」と話し始めた茂木。なんと、「俺の代わりにドラム叩いてくれないか?」とキュウソのソゴウタイスケにお願いし、「茂木さん、俺も叩きたくなってきてました!」とソゴウもその申し出を快諾したのだ。そして、茂木が代わりにキュウソに一時的な電撃加入を果たし、5人が拳を突き上げて同曲を再び歌い上げた。ちなみに、キュウソメンバーは誰一人としてふざけていない。この歌をスカパラと共有できる喜びを全身で噛み締めているようだった。

それにしても、このライヴはトピックが多すぎる。ライヴの細かいところまで記述するのはライヴレポートとして非常につまらないことは重々承知しているのだけど、目の前で起こっている一瞬一瞬がたまらなくスペシャルで、本当に愛おしくて、どうしてもこうやって書き記してしまう。どうか許して欲しい。

さあ、60分に及ぶスペシャルすぎるライヴは、いよいよ佳境に差し掛かってきた。再び9人に戻ったスカパラは、“スキャラバン”で暗から明へと移ろうダンスナンバーを投入し、最後はTAKUMAがなぜか「令和」と「平成」の額縁を持って再登場し、“DOWN BEAT STOMP”をプレイ。そしてその後、なんと会場に残っていた今日の出演アーティストほぼ全員がステージに現れ、飛び跳ねたりスカダンスしたりと大暴れ。いつもよりパンク成分強めに展開する演奏にフロアも最後のひと踊り!

そんな中で迎えたフィナーレは、恒例の谷中号令による「肩組み」で、ステージ上の全員が並んで肩を組み(ステージ端から端までびっちりと!)、フロアの観客もスタンドの観客も隣の人と肩を組んでの“All Good Ska is One”! その光景を祝福するかのように2万個の風船が舞い降りる。観客の頭上でカラフルな風船が舞う向こうで、演奏を繰り広げるメンバーと、その仲間たち――それはいつか夢で見たことのあるような鮮やかな光景でもあり、ずっとこんな瞬間を味わいたかったというリスナーとしての願望でもあり、紛れもなくロックの希望だった。涙で視界がにじんでしまわぬように、しっかりと目を見開き、眼前に広がる感動的な光景を心に焼き付けたのだった。

テキスト=阿刀“DA”大志

セットリスト

1. Samurai Dreamers feat.TAKUMA(10-FEET)
2. Paradise Has No Border
3. Glorious feat.猪狩秀平・YUJI・満・かなす・イイカワケン(HEY-SMITH)
4. GUNSHOTS feat.MAH(SiM)
5. ルパン三世 '78
6. 銀河と迷路 feat.GEN(04 Limited Sazabys)
7. メモリー・バンド feat.キュウソネコカミ
8. スキャラバン
9. DOWN BEAT STOMP feat.TAKUMA(10-FEET)
10. All Good Ska is One

撮影=釘野孝宏

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