VIVA LA ROCK 2019

5.6 MON 11:10-11:45 CAVE STAGE
Track's

黄金のメロディ、CAVEを切り裂く!
メロディックパンク急先鋒が見せた「次代」の予感

Donavon Frankenreiter “Free”のリラクシングなメロディを背に、ゆったりと登壇した3人。だが、一音ドンと合わせた次の瞬間、生田楊之介(Vo&G)がひと息で放った歌声がフロアを切り裂くと空気が一変した。柵などないかのようにステージへと突っ込む観客と、つんのめる寸前のスピードでひたすら前へと爆走するTrack’s。ステージとピットがゼロ距離で熱を交感していく光景は、「ライヴハウスのようなCAVE STAGE」ではなく、正真正銘のライヴハウスだった。

立て続けに“Basement”から“Magic”へとシームレスに移行すると、「どこまで行けるかな?」と不敵な笑みを浮かべた生田楊之介。爆走する2ビートと一体化してドライヴ感を増していく鋭い歌声に引きずり上げられるようにして、観客も体と歌をステージにぶつけては飛ぶ、跳ぶ。そんなピットの熱にさらに突き動かされるようにしてやんちゃに暴れ回る3人だが、その中でも一切ブレない歌とロマンティックなメロディの力が凄まじい。無理やり煽らずとも、マイクを預けなくとも、好き放題に「歌ってしまいたくなる」楽曲がさらにステージとフロアの距離を縮めていった。

MCの隙もなく快速ナンバーを連打するライヴスタイルからしても、そして楽曲の構成にしても、Track’sの背骨となっているのは、90年代から脈々と連なる大文字のメロディックパンクである。しかし「それだけ」ではない輝きをTrack’sが放っているのは何故かがよくわかるライヴだ。エッジが立ちながらもスウィートな響きも持ち合わせる歌声の伸びやかさと、細やかなストップ&ゴーでBPM以上に音のスピードを上げていく非凡なアレンジセンス。その両方がドンピシャでハマる快感と痛快さが、天井知らずで上がり続けていくのである。蒼いまま前へ前へ伸び続ける生田の歌と、その歌を追い越さんとするように爆走する演奏。歌と音のデッドヒートがひたすら続いていく。

「VIVA LA ROCK初登場です。そう言えば、このバンドを組んだばっかりの頃、俺と優貴で一緒に観にきたのがVIVA LA ROCKでした(笑)」

そんなバンドストーリーと今日のステージを特段ドラマティックに仕立てるわけでもなく、サラリと軽いジョークで語るところも、よく見る「行儀のいい感謝スピーチ」でなくて素敵である。巻いた時間で瞬時に“Silly man”を叩き込んでステージを去るところも、現場で磨いてきた瞬発力の賜物だろう。もはや彼らを「若さ」で語る必要がないと思わせるには十分。何にも縛られずやんちゃ坊主に戻れる、心の遊び場としてのライヴハウスを自然体で作り出せるパンクバンド、それがTrack’sだ。やんちゃだがどこまでもスウィート、ロマンティックなのにめちゃくちゃ不遜――その全部がぐちゃぐちゃになってキラキラと輝くライヴだった。さあ、今日のCAVE STAGEはどこまで熱くなる?

テキスト=矢島大地

セットリスト

1. Like a course
2. Basement
3. Magic
4. Silly man
5. 17 years
6. Faraway country
7. Diva
8. Live high
9. Before the night ends
10. a secret
11. Daydream
12. GreenHouse
13. Silly man

撮影=小見山 峻

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