VIVA LA ROCK 2019

5.5 SUN 11:10-11:50 VIVA! STAGE
yonige

yonigeが起こした静かな嵐
驚きの4人編成で歌心を新たに

今年もビバラでyonigeを観ることができる喜び。なんだか当たり前のように毎年出演しているように思えるが、今年でまだ3回目。それぐらい彼女たちの歌は何年も何年も身近で鳴っていたような気がしてしまう。音楽的な変化を求められることも多いこのシーンで、yonigeはパンクバンドのように同じスタイルを貫いている。

しかし、ライヴとなるとまた違う。というか、今日は驚いた。なんとサポートギターを1人増やし、バンドサウンドの厚みを増す道を彼女たちは選んだのである。そして、フェスとはいえ、2人は定番のセットリストでまとめ上げることをよしとしないのだろう。今日も蓋を開けてみれば、全9曲のうち半分以上が昨年発表したミニアルバム『HOUSE』の収録曲。サウンドの変化とあいまって、これまでとは少々異なる空気が生まれていた。

SEが鳴り、近所のコンビニに買い物にいくような態度でふらっとステージに現れた4人は、ひと言も口にすることなく“リボルバー”のイントロを鳴らした。ギターが1本増えたことによって一音目から迫力が違う。これまで以上にサウンドがドライブしていることがわかる。

“2月の水槽”をプレイし終え、牛丸ありさ(Vo&G)がようやくひと言、「ありがとうございます」。そして、サポートギターに元LILI LIMITの土器大洋を迎えたことについて手短に説明。あまりの短さに拍子抜けするほど簡単に。けっこう大事なことだと思うんだけど、まあ、牛丸らしい。

MCでは、「こんな昼間からyonigeって名前で失礼します」とごっきん(B&Cho)。続いて、「全国にはいろんなフェスがあるけど、妙な人型のバルーンの前で演奏するのはVIVA LA ROCKだけです!」と笑わせる。口数の少ない牛丸との対比がいいバランスになっている。

場内の空気が軽く弛緩したあとは、“センチメンタルシスター”“アボカド”とおなじみの楽曲を立て続けにプレイ。“アボカド”のようなアップテンポの曲では迫力のある演奏は映えるが、他の楽曲では牛丸のボーカルが埋もれてしまう瞬間がたまにあり、それはちょっと惜しかった。yonigeの楽曲は激しいものではないが、おとなしいわけでもない。もっと観客の手が挙がっていてもおかしくない音楽ではあるが、そうはならない。バンドの編成がどうなろうが、やっぱり牛丸の歌はじっと黙って聴いていたくなる。意識を歌に集中させて、バンドとの対話を楽しむ。ギターの余韻が消える直前まで拍手だって起こらない。そんな緊張感、ひりついた空気が好きだ。

最後に披露したのは、最新作から“春の嵐”。大きくグルーヴするドラムが先導する、ゆったりとしたこの曲には<今年もお花見出来ないな/道の花びらを踏んで歩こう>という一節がある。みんなの意識は早くも夏に向かっているが、yonigeの歌がそれをスッと引き止める。そして、歌の行間を読ませるような、なんとも言えぬ余韻を観客の胸に残したまま、4人はステージを去った。

テキスト=阿刀“DA”大志

セットリスト

1. リボルバー
2. 顔で虫が死ぬ
3. 2月の水槽
4. どうでもよくなる
5. また明日
6. センチメンタルシスター
7. アボカド
8. トラック
9. 春の嵐

撮影=古溪一道

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