VIVA LA ROCK 2019

5.4 SAT 16:05-16:40 GARDEN STAGE
青木慶則

雨雲にそっと溶けていったピアノの音色
青木慶則のスペシャルなステージ

HARCOという名義で長年活動してきた、青木慶則。昨年12月、本名名義では初となる1stアルバム『青木慶則』をリリース。この日がVIVA LA ROCK、初登場となった青木だが、あいにく急性声帯炎を発症し、今回は歌唱はなし。シンガーとして類稀なる才能を持つ彼の歌声が聴けないのは非常に残念だったが、インストゥルメンタル曲を中心にソングライター、プレイヤーとしての青木の魅力を堪能することができたスペシャルなライヴとなった。

この日、青木がメインで用いたのはピアノとサンプラー。様々なサンプリング音源を用いながら、まずは流麗な即興演奏でGARDEN STAGEの空気を変えていく。今にも雨が降りそうな曇り空だが、どこか緊迫感のあるスリリングな演奏にはぴったりの舞台装置として機能している。

「今日は歌を歌うことになっていたのですが、急性声帯炎になってしまい、お医者さんにも歌うことを止められているので歌うことができません。ごめんなさい。でも、インストの曲をたくさん聴いて欲しいです。VIVA LA ROCKはいつも天気がいいと聞いていたけれど、今日はちょっと危なそうだね」と、パソコンの読み上げ機能を使ってMCをする青木。本人の朗らかな笑顔とは真反対の機械的な声が、オーディエンスの笑いを誘う。

南三陸ミシン工房のふたつめの工房の竣工式の曲のために作った楽曲である“竣工式 -2015-”を口笛とビートを同期させつつ、ピアノで演奏。続けて、演奏された1stアルバム『青木慶則』に収録されている“手のひらのニューヨーク”は、歌なしのピアノだけのインストゥル・メンタル・アレンジだったのだが、これが実に素晴らしかった。アメリカの作曲家、ジョージ・ガーシュウィンを彷彿とさせるスウィンギーな演奏は「歌心」に満ちたものだった。

後半は、昨年活動を再開したバンド・キンモクセイの伊藤俊吾(Vo&G)をゲストに迎え、2002年の紅白歌合戦でも披露したという日本のポップス史に残る名曲“二人のアカボシ”(キンモクセイの楽曲)を演奏。伊藤のソウルフルでかつ力強い歌声とギターのファンキーなカッティングと、青木のピアノの響きに、小雨が降り始めているにもかかわらず、たまらずオーディエンスも思わず踊り出す(ちなみに伊藤は雨男とのことで、しきりにこの日、雨が降ったことを謝っていた)。

すでにかなり贅沢な内容にもかかわらず、ここでさらにゲストとしてワーク・ショップにも参加していた Quinka, with a Yawnを招き入れる。HARCO名義でリリースし、車のCMにも使われていた楽曲、“世界でいちばん頑張ってる君に”、そして、前述の青木のソロ・アルバムに収録されている名曲“支度”を、共に青木がピアノ、伊藤がヴォーカル、Quinka, with Yawnがコーラスという編成で披露した。

「次もしチャンスをもらえるなら、今度は歌を歌いたい」とMCで言っていた青木。今日のライヴも特殊な状況も相まってオーディエンスの記憶に残るであろう実に素晴らしい内容だったが、青木の歌声と楽曲は実にVIVA LA ROCKが毎年開かれている5月にふさわしいものばかり。青木の朗々として、かつ優しい歌声がVIVA LA ROCKのステージに響き渡る日を今から楽しみに待ちたい。

テキスト=小田部 仁

セットリスト

1. (即興)
2. 燕魚の群れ
3. 竣工式 -2015-
4. 手のひらのニューヨーク
5. 二人のアカボシ(キンモクセイ)
6. 世界でいちばん頑張ってる君に
7. 支度

撮影=小杉 歩

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