フレッシュな次世代ミクスチャーが
顔を揃えたCAVE STAGE
オルタナティブな感性が紡ぐ
新たなスタンダードの萌芽
2022年のビバラで最も刺激的な一日は、ジャンルレスでありミスクチャーであることが一般的となった現代の音楽シーンを体現するラインナップが揃った4/30だと個人的には思う。全体で見ればバンドがメインのフェスだが、この日はバンドとソロがほぼ半々というのも、「個」が強まり、バンドとソロの境界線が融解しつつある現状をよく表している。そして、出演者7組中でビバラ初登場が5組というフレッシュな面々が揃ったCAVE STAGEは、彼らがそのオルタナティブな感性でこれからのシーンを担い、新たなスタンダードを築くであろう可能性を十二分に感じさせた。
トップバッターを務めたODD Foot WorksはDJとMPC奏者を交えた5人編成で、事前に予告された通りの30分ノンストップセットを披露。MPCの手打ちのビートに乗せて、Pecoriが巧みなフロウを聴かせる“KAMISAMA”からオーディエンスが一斉に手を挙げる盛り上がりを見せ、SunBalkanのグルーヴィーなベースがうねる“JELLY FISH”まで、序盤はアグレッシブなパフォーマンスが続く。一方、中盤に披露された新曲以降は彼らの「ソング」の側面も強く表れ、声が出せる環境であればシンガロングが起こっていたであろう“逆さまの接吻”ではTondenheyがトレードマークとも言えるフリーキーなソロを聴かせ、このエッジとポップのバランスも抜群。US直輸入のヒップホップ/トラップでもなく、ポップス的なJ-RAPでもなく、その両方の良さを併せ持ち、生演奏の強みもしっかり生かした彼らのステージはやはり相当にオリジナリティがある。アンセミックな“NDW”から少しの寂寥感が心地いいラストの“夜の学校”に至るまで、30分を一気に駆け抜けた。
2019年結成の若手バンドながら、2020年にファーストアルバムとミニアルバム、2021年にセカンドアルバムと、速いテンポでのリリースが続くOchunism。楽器陣5人が先にステージに登場し、最後にボーカルの凪渡が姿を現すと、現時点での彼らの代表曲“rainy”からライブがスタート。生演奏にサンプラーを絡めつつ、横揺れの心地いいムードを作り出し、そこに凪渡の艶のある伸びやかな歌声が乗った楽曲は確かな記名性を感じさせるもので、一気にBPMを上げ、エネルギッシュなパフォーマンスを見せた“freefall”もご機嫌だ。そして、ここからが「ジャンル不特定バンド」を自称する彼らの真骨頂。ファンキーな4つ打ちとハーフテンポを行き来する“SHOUT”、ミクスチャーロック的なボトムの太い演奏を聴かせる“Mongoose”、ジャムセッションのような自由度の“glass”と、そのカラフルな曲たちは「Suchmos以降」の地平を越えて行こうとするアイデアと好奇心の賜物だと言えよう。最後は流麗なストリングスをフィーチャーしたダンスナンバー“Mirror”でユーフォリックな空間を作り出し、フレッシュなステージを締め括った。
VIVA LA ROCKには3年ぶりの出演となる崎山蒼志。一人でステージに姿を現し、1曲目に弾き語りで披露されたのは初期のナンバー“夏至”で、これは2019年のGARDEN STAGEと同じ選曲だ。近年はバンド編成でのライブも行っているが、この日はそのまま弾き語りで、アップテンポの“ソフト”、アニメ主題歌としても知られ、メロディーメーカーとしての才を示した“嘘じゃない”を続けて行く。こうなると一見この日のCAVE STAGEのラインナップでは浮いているようにも感じるが、彼も間違いなくジャンルレスな感性の持ち主であり、その証明となったのが序盤の雰囲気から一転、フロアに強烈な低音を響かせた扇動的なエレクトロニックナンバー“水栓”。さらに、そのままエレクトロニックなアレンジで“SAMIDARE”を一節聴かせると、再びアコギを持ってアグレッシブに“samidare”を歌い上げ、場内は大きな拍手に包まれた。このフリーフォームな感性こそが、崎山蒼志という音楽家なのだ。ラストは石崎ひゅーいとコラボレーションをした“告白”を、同期を流しながら披露。次はより大きなステージで、バンド編成のライブをも見てみたい。
2022年のVIVA LA ROCK、CAVE STAGE初日の折り返しを務めるのはLucky Kilimanjaro。音源は中心人物の熊木幸丸が一人で作り上げるが、ライブでは6人編成を生かしてパーティーな空間を作り上げる、こういったポスト・バンドなあり方に関して、彼らは日本における先駆け的な立ち位置にいるとも言えそうだ。メンバーに続き、最後に熊木が登場して「たっぷり踊っていってください、いいですか?」と声を掛けると、“エモめの夏”からライブがスタート。The Avalanches的な声ネタ使いが涼しげなムードを作り出し、初期の人気ナンバー“Burning Friday Night”ではメンバーが一斉にステップを踏んでみせる。中盤では彼らの真骨頂であるエレクトロハウスから、近年のラッキリのシグネチャーとなっているラテン風味たっぷりの“踊りの合図”と、多彩なリズムアプローチもお見事。そこからシームレスに繋げた“果てることないダンス”で大胆なブレイクを用いながらクライマックスを作り出すと、ラストは祭り囃子を用いた“太陽”で大団円。オーディエンスの心も体もアップリフトする素晴らしいステージ。Don’t Stop Dancin’, Don’t Stop The Music!
Tempalay、TENDREに続いてこの日3ステージ目(!)となるボーカル/ベースの高木祥太をはじめ、メンバーそれぞれが一プレイヤーとしても多岐に渡り活躍するBREIMENがビバラに初登場。1曲目はクラップから始まる今年1月リリースの新曲“あんたがたどこさ”。構築的なリズムとコード進行の中、途中でサトウカツシロの獰猛なギターをフィーチャーし、キャッチーなコーラスも組み合わせたこの一曲には、彼らの異能さが詰まっている。ポップス要素の強い“IWBYL”もジャズファンクなフレーズのセンスに耳を奪われるし、“猫ふんじゃった”の一節がイントロに添えられた“CATWALK”は意表をつく曲展開が非常にユニーク。急遽一曲追加することに決めて、こちらもテンポチェンジの妙が光る“色眼鏡”をプレイし、リリカルなメロディーの“赤裸々”を林洋輔のサックスとともにしっとり届けたあとは、「遊ぶ場所がないと遊べない。フェスもやってくれないと出れないので、呼んでくれてありがとうございます。次はもっと大きいステージで」と話して、ラストは“Play time isn’t over”。遊び心のあるアレンジとエモーションがばっちりかみ合った名曲を届けてライブは終了したが、それでも遊び時間は終わらない。CAVE STAGEは残り2組。
昨年に続いてのCAVE STAGE出演となったKroiのステージは「今日のライブのコンセプトは?」「めちゃめちゃ疲れて帰る」というやりとりから、今年3月にリリースされた“Small World”でスタート。ラウドな演奏にフュージョン風のウィンドシンセが加わるまさに彼ららしいミクスチャーな曲だが、以前より音の抜き差しが整理され、ポップスとしての強度が上がっていることが伝わってくる。その足がかりとなったのが、次に演奏された“Balmy Life”だろう。内田怜央のスムースなフロウ、ファンキーな演奏にトークボックスと耳を引く要素の揃った名曲でオーディエンスの反応もバッチリ。僕は去年のレポートで「決定打となるような一曲が生まれれば、状況は大きく変わるかも」と書いているのだが、この曲が彼らをネクストフェイズに導いたことは間違いない。内田がパーカッションを叩き、ソロ回しを含むエネルギッシュなセッションを聴かせた“Juden”から新曲の“Pixie”、ディスコティックなグルーヴに乗せ、内田が泥臭いシャウトを響かせた“Fire Brain”まで、後半は一気に畳み掛けて、CAVE STAGEの空間を完全に掌握してみせた。
初日のCAVE STAGE、トリを務めるのはキタニタツヤ。ミクスチャーでオルタナティブな感性を持ったアーティストが数多く出演した中にあって、キタニもまたそんな一人であるとともに、彼の楽曲からはすでに「J-POP」としてのポピュラリティが感じられる。ライブ序盤は、ビートミュージックの要素を持ったハイブリッドなスタジアムロック“聖者の行進”、ALIとコラボレーションした性急なジャズパンク“Ghost!?(BMJ ver)”、初期曲の“悪魔の踊り方”と続け、怪しい色気を纏った歌声やその立ち姿は強いカリスマ性を放つ。一方、MCでは大学生のころにビバラの設営バイトをしたエピソードを語り、「こうやって出れて嬉しい」と生真面目な一面も覗かせたのはいいギャップだ。ライブ中盤ではキタニもギターを持ち、ポルカドットスティングレイのエジマハルシとコラボレーションをした“Cinnamon”や“人間みたいね”で端正なアンサンブルを聴かせ、“Rapport”で再びギアを上げた後に披露された名曲“プラネテス”は、キタニが「歌」と向き合って作り上げた最初の成果と言えるだろう。ラストは再びグラマラスなロックナンバー“泥中の蓮”で荒々しく締め括り。さあ、来年はこのうちの何組がメインステージに立っているだろうか?
テキスト=金子厚武
撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

