VIVA LA ROCK 2022

ビバラとロックの物語、
バンド同士の友情と絆が溢れる!
忘れられない瞬間だらけだった
DAY3・PEACE STAGE

 プロデューサー鹿野淳(とゆるキャラたち)による注意事項やルールのアナウンスと「ディスタンス体操」に続いて、この日のラインナップの先陣を切ってPEACE STAGEに登場したヤバイTシャツ屋さん。“ハッピーウェディング前ソング”でのっけからでっかい手拍子を巻き起こし、“無線LANばり便利”の高速ビートとギターリフで加速すると、こやまのレスポールが火を噴いて“泡 Our Music”へ。サビで弾けるダンスビートが朝イチのたまアリを踊らせていく。そして「新曲を宇宙初解禁してもいいでしょうか?」(こやま)と繰り出されたのはヤバT初のサマーソング、その名も“ちらばれ!サマーピーポー”。一瞬ギャグかと思ったが、ガチ。全員初見なわけだが、一瞬でその全員を掴んでしまうキャッチーさはさすがとしか言いようがない。
 しかしただ楽しいだけではないところがやはりヤバイTシャツ屋さんである。コロナ禍においていち早くツアーを行ったことからもわかるとおり、彼らはロックの火を絶やさないために全力で走り続けているバンドでもある。この日のPEACE STAGEとWORLD STAGEのラインナップの中で「いまだにヤバTが一番若手」だと指摘し、「ロックシーン、心配です!」と若いバンドが出てこないことに危機感を表明するこやま。「みんなバンドやれよ!」とエモーショナルなギターソロもロックのかっこよさを体現する“Give me the Tank-top”をぶちかますと、“NO MONEY DANCE”で「ロックって楽しいぜ」を表現しきって帰っていった。

 続くKEYTALKは“HELLO WONDERLAND”からスタート。寺中友将と首藤義勝のツインヴォーカル、小野武正のギター、八木優樹の叩き出すダンサブルなビート。KEYTALK印のサウンドで、瞬く間にPEACE STAGEを中心に巨大なユニティが生まれていく。ソリッドなバンドサウンドを轟かせる“大脱走”、寺中の「お祭り騒ぎしようぜ!」の声に待ってましたとばかりにぶち上がるお祭りアンセム“MATSURI BAYASHI”で前半を駆け抜けると、中盤では“sympathy”に英語詞の“blue moon light”と懐かしい楽曲を披露。特に“blue moon light”なんてフェスでやっているの、近年ではちょっと記憶にない。レアな曲を聴けたお客さんはラッキーだったと思う。
 「みんなで飛び跳ねてハッピーな空間作っていきましょう!」という首藤の言葉から“Love me”でスウィートなムードを描き出すと、いよいよライブはクライマックスに突入していく。KEYTALKといえば、いや、フェスといえば文字通りモンスター級フェスアンセム“MONSTER DANCE”で一面のダンスを呼び起こすと、ラストは鬼アゲ系夏ソング “Summer Venus”で爽快&ホットに駆け抜けた。MCでめちゃくちゃ面白いことを言うとか、派手にフロアを煽るとか、そういうことはしないのに、ただ曲をやるだけでフェスの主役に躍り出てしまうバンド。さすがだ。

 PEACE STAGE3組目はTHE ORAL CIGARETTES。真っ白なドラムセットやアンプが映えるステージを真っ赤なライトが照らし出し、レーザーライトが空間を切り裂く。フードを被って登場してきた山中拓也がギターを背負い叫ぶ、「埼玉の力見せてみろ!」。一気にヴォルテージの上がったオーディエンスに向けてぶっ放されたのは“Red Criminal”。ビリビリと響く轟音を軽々とぶん回すバンドの力強いパフォーマンスにひたすら圧倒されるオープニングだ。「ビバラ、お元気でしょうか?」とここで山中が挨拶。あきらかにあきらがKEYTALK・武正と同じ服を着ていることにとりあえずツッコミを入れると(お揃いにしようと一緒に買いに行ったらしい)、楽屋に置かれていたプロデューサー鹿野からの手紙に触れて「『勢いだけだったオーラルがここまで来てくれて嬉しい』って書かれていたけど、俺たち今も勢いだけですから!」と変わらない熱い思いをぶちまける。
 「“全カマシ”でいきます」という宣言から“BLACK MEMORY”を投下すると、ここで特別ゲストとしてこの後このステージに出演するSiMからMAHが登場! 披露するのはもちろんリリースされたばかりのフィーチャリングEP『Bullets Into The Pipe』に収録された“CATCH ME feat. MAH”だ。MAHが歌う日本語のラインに固い絆が浮かび上がる。その大迫力の競演の余韻も冷めやらぬなか、最後は“狂乱 Hey Kids!!”を投下。一面のヘドバンにハンズクラップ、とどまることのない最高潮を刻み続け、その興奮の嵐状態のまま最後まで走り抜けた。

 「今だ! 跳べ!!」。MAHの一声によって揺れに揺れるたまアリ。SiMのライブは最初から最後まで、百戦錬磨のバンドが貫禄を見せつけるものになった。「ずっと『鹿野、SiMをトリにしろ』と言ってきたんですが、去年大トリという形で目標を達成してしまったので、特に言いたいこともなく」(MAH)とMCでは自分たち主催「DEAD POP FESTiVAL」の宣伝に終始しつつ、矢継ぎ早に楽曲を投下。しかしMCよりも楽曲のほうがよほど雄弁なわけで、MAHは“Amy”では隣のステージの前まで行ったり、“BASEBALL BATバットを担いで笑顔を見せたり、フェスを盛り上げる主役の座は譲らない。
 2度目のMCでも言いたいことがなかなか見つからないようだが、「ひとつだけ言いたいことあったわ。お前らロックってなんだろうって考えたことある? ロックっつうのは、怒りとか悲しみとか愛情、なんでもいいんだけど、自分の中にある感情が、その音を聴いただけで自分のど真ん中でぐわーって燃え上がる熱を感じることができる、そういうもの」と語り始めた。そういうロックをやっているアーティストが入れ替わり立ち替わり出てくるフェスって最高だ……と続けるのでビバラを讃えているのかと思いきや「DEAD POP FESTiVAL、そういうフェスになってます」とやはりそっちの話だったか。客席を見渡し「なんかみんな物足りなそうなんだけど」とMAH。「アレか、アレがないとダメなんだね。みなさん真似しないでくださいね」と、中指を立てて「死ねー!」。そうして突入した“KiLLING ME”はアリーナを瞬間沸騰させたのだった。

 おなじみのSEとともに、バックに「VIVA LA MTH」の文字を背負って登場したマキシマム ザ ホルモン。だが見ると、なんとダイスケはんがドラムに座っている。お?と思う間もなくナヲがいきなり「とりあえずちょっと座ろうか、VIVA LA ROCK」と観客を座らせる。そうして歌い出したのは“恋のきなこ私にもってきなさいっ”。あえて説明はしないのでどういう曲かを知りたい人は各自調べてチェックしてほしいのだが、何より4人がめちゃくちゃ楽しそうだ。思わぬ変化球スタートに「こんなのビバラでしかやらない。友達の鹿野のイベントだから」(ナヲ)「なんの緊張感もない」(ダイスケはん)。これまでもさんざんビバラを遊び場にしてきたホルモンだが、今日もそのつもりのようだ。
 “令和ストロベリーバイブ”から“絶望ビリー”、“ルイジアナ・ボブ”と攻撃力のある曲を繰り出しつつ、「去年、1年後に帰ってくるまでがVIVA LA ROCKという話をした」と話し始めるダイスケはん。「バトンをつないで、来年鹿野さんに渡そうと。それが今日とんでもないバトンとなってこのさいたまスーパーアリーナに帰ってきた。そうだろ鹿野さん!」。そう叫ぶとステージに現れたのは頭上に「しかの↓」という文字(バトン)を背負ったプロデューサー鹿野。プロデューサーも思いっきりおもちゃにしつつ、でもそこにはもちろんガチでエモい物語とメッセージが込められている。ぶっつけ本番の「恋のおまじない」からのラスト“恋のメガラバ”ではなぜかMAN WITH A MISSIONのトーキョー・タナカがストレッチポールを持って乱入。もう何が何やらだが、とにかくそこにはビバラとホルモンとその仲間たちが織り成す、熱いコミュニケーションがあった。

 そしてこの日のPEACE STAGE、トリとしてステージに立ったのは今年結成25周年の節目を迎えている10-FEETだ。いつものSE“そして伝説へ…”にあわせてオーディエンスが高々とタオルを掲げる中入場してきた3人。「よっしゃ、ほな、やろうか」とTAKUMAがギターをかき鳴らす。少しずつライブを取り巻く状況に触れつつ「どんどん良くなるとは信じてるけど、先のことはわからへんし、1個1個むっちゃいいライブをしたいなと思ってる。これが最後だと思ってやります」と語った刹那、“シエラのように”の瑞々しいバンドサウンドとメロディが溢れ出す。客席の隅々にまで視線を配りながら優しげな笑みを浮かべて歌うTAKUMA、そして彼の歌を支えるNAOKIのベースとKOUICHIのドラム。鉄壁のトライアングルがここに集まったすべての人の心に丁寧に明かりを灯していくようだ。バンドの歩みを物語るようなセットリストが展開する中、お客さんの手拍子でカウントを取ってスタートした“RIVER”ではスマホのライトを点灯してもらい、前から後ろへ、後ろから前へとウェーブを作り出す。
 “ヒトリセカイ”を叫ぶように歌い満場の手拍子を巻き起こすと、TAKUMAは振り絞るようにして語り出す。「誤解だらけやな、どうやったら伝わるかな。言葉、トーン、気持ち、表情、『ありがとう』ひとつだけでもいっぱいあって。そんなもんが文字だけで伝わるか! だから俺はライブで伝えたい。音楽があったら、言葉足らずでもちゃんと伝わる、そんな気がしてます」。そして「届けー!」という叫びとともに繰り出されたラストソング“その向こうへ”。明るく照らし出された場内では、いくつもの掌がステージに向けて掲げられる。そこに声はなくとも、間違いなく、10-FEETとビバラのオーディエンスは濃密な「会話」を繰り広げていた。

テキスト=小川智宏
撮影=釘野孝宏

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