総括レポート
太陽と音楽に愛されたGARDEN2日目!
すべてに愛を捧げ、祝福を鳴らし、
音楽劇場を広げた名演の数々
VIVA LA ROCKが埼玉県と連携して実施している取り組みのひとつに、「You'll Never Live Alone」プロジェクト(通称:ユルネバ)がある。これは、障害者の方々が創造するアートをはじめ、自殺防止活動や里親制度を普及啓蒙することが目的のもので、ビバラが初回から掲げている「You‘ll Never Live Alone」--あなたは決してひとりで生きているわけじゃない、というメッセージを具体的なアクションに移している。その一環として、今日のVIVA LA GARDENには、「Colors」と「いいもんズ」が登場した。どちらもコロナ禍前の2019年以来となる出演。まさに音楽を鳴らす喜びが音となって表れていくようなライブに、大きな拍手が送られた。ビバラのチケットを持っていない方でも自由に遊べるVIVA LA GARDENは、誰にでも開かれているエリアだからこそ、音楽を通して多くの人の存在に想いを馳せられる場所でもあるのだ。ユルネバの「誰だって一人だし、だからこそ、誰もが一人じゃない」というメッセージは、あなたの周りにいる誰かを思いやりながら生きていくことの大切さを伝えるものでもあって、ガーデンに満ちている自由は、その双方向の優しさがあって初めて成り立っているのだと思う。
トップバッターとして登場したAile The Shotaは、GARDENの光景を目にするなり「めちゃくちゃホームじゃないですか」とひと言。ステージエリアはもちろんフードエリアまで観客で溢れ返っているのだから、そりゃもう見渡す限りがホームのはずだろう。しかし、そういったこと以上に、とても温かい空気が充満していたからこそ、初出演の彼の口から自然と「ホーム」という言葉が溢れ出たのだろう。それはGARDEN STAGEの開放的な雰囲気のみならず、Aile The Shotaというアーティスト自身が放つヴァイブスが、自ずと呼び込んできたものなんじゃないかと思う。
「この場所に僕を立たせてくれたすべてに、愛を。またあなたの愛に会いに行きます」という言葉で表したAile The Shotaは、まさにこの空間を包み込むような柔らかい歌唱で、幅広いトラックを悠々と泳いでいった。“AURORA TOKIO”のように都会的な匂いのする楽曲も、彼が歌った瞬間から人間くさく聴こえてくるから面白い。たった40分のセットで11曲を披露するほど矢継ぎ早に歌いまくるライブ。とにかく歌に没頭している様がいい。「Make some noise!」と言って観客を煽る場面こそあれど、決意も感謝も愛も歌の中で伝え切るという強い意志が彼を彼たらしめているのだと思った。ラストに歌われたのは“LOVE”。たったそれだけ、だけどそれこそがすべてだと、シンガーとしてのブレないメッセージを堂々と見せつけるライヴだった。
続いてステージに上がったRyu Matsuyamaは、1曲目の“Boy”、その第一声からガーデンの色をガラリと変えた。Ryuのファルセットが天井知らずに伸びていき、温かく緩やかだったGARDEN STAGEに、どこか神聖とも言える空気が満ちていった。まさにその曲名通りの“Deep, Blue”というか、涼やかで青くて祝福感のあるメロディが伸びやかに響き渡る。こんなに優しく、こんなに翼の生えた声で歌えたら、どんなに気持ちがいいだろう。♪Ah♪と歌うごとに晴れやかな笑顔を見せるRyuの姿に、そんなことを思う。
「2020年、僕らはこのステージに出演する予定でした。だけどコロナ禍の影響を受けて出演は持ち越しになり、今日が3年越しのビバラです。あの時はいろんなことを思っていたけど、今日はとても楽しい」(Ryu)
そう話してから披露した“kid”は、コロナ禍の最中で自分とは何なのか、自分の命とは何なのかを考え続け、「いつでも心の中の無垢な少年に会いに行けるように」という願いを綴った歌である。いわば命の原風景の歌であり、どうか純粋であれと自分に語りかける歌。Ryuの歌が湛える純白感の理由そのものみたいなメロディが、夕方のGARDENの風に乗って心地よく染み入ってくる。耳というか、血流に訴えかけてくる感じ。ああ生きているなぁという感じ。微動だにしないけれどステージから1mmも視線を外さない観客も、そんな内側の熱さを感じ続けるライヴだったんじゃないだろうか。
マハラージャンは、リハーサルから<ズぅレた、間ぁ、の悪さもぉ〜>(ブラックビスケッツの“タイミング”)というフレーズをソウルフルに、しかも執拗に歌い続け、ガーデンの観客に<タイミング>と歌わせてはニンマリとしている。その楽曲セレクトがそのまま彼の正体と出自を表している気がするが、どちらにせよステージ巧者に間違いないソウルシンガーの登場だ。
ルーパーを用いてボイスパーカッションとギター、ベースを重ねて、あっという間に“いいことがしたい”のトラックが完成。超ソウルフルなギターソロで観客に接近し、<アァ〜、イェ〜!>を交換してガーデンを一気にホームグラウンドに変えてしまう。さらには<エーオ!>と歌わせてから“何の時間”に雪崩れ込む。いいメロディ、いい演奏、いい歌であるにもかかわらず観客に向けて<これ何の時間?>と問う姿はシュールとも言えるが、そうやってクスッとさせておいて、最終的には美麗なメロディと熱い歌で一気に持っていくところがニクい。何の時間と問われれば音楽の時間だしライヴの時間だが、技巧をひたすらユーモラスに使い続けるライヴパフォーマンスを観れば、ただただ楽しい時間ってことでいいやと思ってしまう。ブルースやソウル、ファンクのFunの部分を徹底的に抽出してエンターテインメントに昇華する彼の歌には、そういったルーツへの敬愛が強くあるからこそ広く伝えたい、という願いが滲んでいて、そこが素敵だ。
<セーラ☆ムン太郎>のシンガロングに対して♪誰それ♪と返し、また爆笑とFunを振りまいてステージを降りたマハラージャン。誰これ?をフックにして音楽伝承を繰り返す、音楽愛の塊みたいなライヴだった。
そして、2日目のGARDEN STAGEを締め括るのはDJ石毛&ノブ(the telephones)。
the telephonesは埼玉をレペゼンするバンドであり、ビバラ初回から共に歩んできた盟友でもある。さらに言えば、石毛は各ステージでライブが始まる時に流れる、あの「ビバラローック!」のジングルを制作&叫んでいる張本人でもある。そんなthe telephonesから飛び出したふたりのDJ=最高の音楽宴はひとつのVIVA LA GARDEN名物で、それが4年ぶりにいよいよ帰ってくるというワクワクを隠さない観客が、ワサワサとGARDEN STAGEに集っていた。
EDMにテクノ、ニューウェイヴにラップメタル、そしてLOVEとDISCOが矢継ぎ早に繰り出される時間を踊りまくるオーディエンス達。ノブは早々にシャツのボタンを外し、石毛は惜しげもなくthe telephonesの楽曲を歌い、「1時間半、踊り狂え!」と叫んだ通り、ふたり自身がトランス状態になって観客エリアとのボーダーを突破しまくる姿が最高である。ノブがオーディエンスの中に突入してひたすら爆走するのもおなじみだが、子供を見つけるとひたすらハイタッチする彼の姿は、子供も大人もずーっと笑顔でいられるVIVA LA GARDENの真髄を表しているようだった。今日も素晴らしいライヴ、いい笑顔、温かい優しさに満ちていたGARDENを、ひたすら「楽しい」で包み込んで最後にはザーッと洗い流していく時間。これ以上ない3日目の締めだった。洗い流して、とにかく笑って、また明日。音楽とあなたのおかげで、今日もGARDEN STAGEは最高だった。
テキスト=矢島大地
撮影=古溪一道