総括レポート
キャリアもジャンルも関係なし
垣根を越えて集合した全6組に
熱狂し続けたSTAR STAGEの1日!
今日も今日とて夏日を観測し、外はもちろん暑かったけれど、今日のSTAR STAGEはもっともっと熱かった! 空調を全開にしても熱を帯びていた今日1日を振り返っていく。
4日目のSTAR STAGEのトップバッターとしてステージに登場したのは、世界3位になるニュー・エキサイト・オンナバンドを標榜するCHAI。「C・H・A・I、CHAIだよ」と自己紹介も兼ねたSEが流れ始め、湧くフロア。ゆっくり足並みを揃え縦一列でフロアに入場してきた4人。“END”からスタートした本ステージ。スタートなのにEND?と思ったりもしたけれど、終わりは始まりなわけで。そんな曲を1曲目に持ってくるあたりが憎めないCHAIのいいところなのかもしれない。
「楽しんでいってね!」と次に始まったのは、先月リリースしたばかりの“We The Famale!”。女性であること、そして「あなたらしく」という強いメッセージ性のあるこの曲を4人は横並びで披露した。演奏から伝わるのはCHAIの女性としての、そしてバンドとしてのアイデンティティ。彼女たちの音楽はこの数年でより強度を増したと思う。円熟味が増し、「NEOかわいい」の中に大人の色気が音や人となりにプラスされていると思うのだ。力強く拳を突き上げ、“We The Famale!”を歌い終えると、「観に来てくれてありがとう! おはよう!」と“ボーイズ・セコメン”がスタート、徐々に温まってきたフロア。カナのカッティングでさらにボルテージが上がる。
可愛らしく「物販紹介」が終わると、曲は“N.E.O”へ。コンプレックスなんかどうでも良くなるようなステージパフォーマンスに酔いしれていると、“PING PONG! (feat. YMCK)”のアッパートラックでゲームの中のような世界線へ誘われる。そのあとに“ラブじゃん”なんて歌うものだから、もうこの空間がラブじゃん! 愛が溢れすぎてるじゃん!という感情になってしまう。ラストの“sayonara complex”までCHAIの世界観を存分に披露してくれた4人。「VIVA LA ROCK10回目の開催おめでとう! 鹿野さんありがとう!」と祝いと感謝もしっかり伝えてくれるCHAIはやっぱりチャーミングだし、NEOかわいい!
次に現れたのは、the band apart。彼らの代表曲である“higher”のイントロが流れ始めるとステージの光が輝き始める。この日のバンアパのステージは、一際、優しさに包まれていたように思う。荒井岳史(Vo&Gt)の的確なギターフレーズに、「個」として輝きを魅せる川崎亘一(Gt)の小気味のいいカッティングリフ。フロアを一気にバンアパ色に染め上げると、間髪入れずに“amplified my sign”へ。オレンジのレザーのような照明に目を奪われながら、4人の心地よいセッションにも似たサウンドに耳を惹きつけられる。the band apartが奏でる音楽は、確実にSTAR STAGEを掌握し始めている。自然とオーディエンスの腕が上へと上がり、手拍子が起こるフロア。原 昌和(Ba)の不穏さをまとう無骨なベースの低音から、曲が進むにつれて音像が開けていく“The Ninja”では、木暮栄一(Dr)のドラムの妙も相まって、心臓を貫くようなソリッドな音色がフロア全体を包みこんでいる。MCでは、10回目の開催を祝福する言葉を述べたのち、the band apartが結成25周年を迎えたことにも触れ、「このステージは鹿野さんからのご祝儀だと思っています」と。そんな言葉に、きっと全ての人が同じことを感じていたと思う。「このステージは今日来ている私たち全てにとってのご祝儀だよ!」と。だって、バンアパが奏でる音楽を10回目の記念すべきビバラで聴くことができるなんて、幸せ以外の何ものでもないのだから。
「いい日にしてくださいね」という言葉のあとは、手拍子が自然と起きる多幸空間の中でノンストップ3曲。the band apartのアンセム“Eric. W”のイントロが流れ始めるとフロアはこの日一番の歓声に包まれた。<Yeah,Yeah,Yeah>のシンガロングでフロアの心は1つになり、ステージの中心ではオーディエンスの熱狂に答えるかのように川崎が飛び跳ねている。最後までそのサウンドでフロアを掌握し続けたバンアパ。演奏後には、鹿野がステージに登場し、25周年を祝った。「ご祝儀なんかじゃない。こんなに真似しようと思っても真似ができないバンドはいない」という言葉、感動的でした。the band apart、永遠なれ!!
STAR STAGEも折り返し地点、ステージに現れたのは本日、VIVA! STAGEで行われた大宮セブンのステージでも大活躍だったヤバいTシャツ屋さん。「はじまるよ〜!」と陽気なSEが流れ、3人が颯爽と登場すると、こやまたくや(Vo&Gt)の「VIVA LA ROCK! この感じ3年振りやな、勇気出してかかってこいよ!」という熱い言葉からスタートした。1曲目の“Tank-top of the world”、その冒頭から縦横無尽にステージを動き回る、しばたありぼぼ(Vo&Ba)。「声が小さい! もっといける!」とこやまが煽るものだから、オーディエンスはそれに答えようとギアを上げていく。すると1曲目からフロアのボルテージは最高潮手前までやってくる。そんな状態で“かわE”に突入すると、最高のシンガロングと大合唱だ。自然と笑顔になるヤバTの3人とフロアいっぱいのオーディエンス。歌詞通り<たのC 越えて たのDやんけ>状態。
勢いそのままに演奏された“無線LANばり便利”では、こやまの「みんなでWi-Fi、Wi-Fi叫ぼうぜ!!」に応えるようにフロアがひっくり返るほどの<無線LAN LAN LAN LAN>の大合唱が起こり、さらなる勢いに乗ってどんどん盛り上がりが増していくフロア。MC中には、ありぼぼが考案した「GWJ」(ゴールデン・ウィーク・ジャンプの略だそうです)を、アリーナを埋め尽くす全員で実行! 後方から波のようにジャンプしていくあの光景は、VIVA LA ROCK 2023の名場面にランクインすることだろう。
ヤバTの魅力を詰め込んだと言っても過言ではない“Blooming the Tank-top”を披露し、ライブは終演に向けてフルスロットル。オーディエンスは自由に飛び跳ね、手を上げ、サークルを形成し、ダイヴだってしちゃう。こやまの「みんな3年間、よう我慢したな!」、「でも、もっとめちゃくちゃしてください」という言葉に感動と興奮を覚えていると、ジェットコースターのようなライブは幕を閉じ――いやいや、ここからは延長戦! まだ持ち時間があるということで突如スタートした“あつまれ!パーティーピーポー”を疾走するかのように歌い上げ、みんなが求めていた最高に騒ぎまくるライブを完結させた。
4組目にステージの上に登場したのは、日本が世界に誇るスカバンドである東京スカパラダイスオーケストラ。“Free Free Free”の別ヴァージョンがSEとして流れると、自然とフロアに拍手が巻き起こる。「We Are 東京スカパラダイスオーケストラ!」と谷中敦が口火を切ると、STAR STAGEは大きな歓声に包まれた。「ビバラ、盛り上がる準備はできているかい?」とスタートしたのは、“Glorious”。加藤隆志のギターソロで完全にオーディエンスの心を鷲掴みしたかと思えば、<Ohh ohh Yah>とオーディエンスは歌い、スカパラのエネルギッシュな演奏に応えようと大きな声を出してる。「おもいっきり手足を伸ばして戦うように楽しんでくれよ!」と谷中の声に反応するオーディエンス。そしてここから、スカパラのオンステージはテクニカルかつアクティブに進んでいくことになった。
代表曲である“DOWN BEAT STOMP”、オレンジ色の光に包まれながらパフォーマンスした“太陽にお願い”、“SKA ME CRAZY”を続けざまに披露。メンバーがツーステを刻むものだからオーディエンスもつられてステップを刻んでしまう。さいたまスーパーアリーナの床の底が落ちてしまいそうなほどの盛り上がりに、スカパラのメンバーの表情にも笑みが溢れていた。(もちろんいい意味で)変態的な沖祐市のキーボードプレイも相まって、フロアの熱気は最高潮。 “Can't Take My Eyes Off You -君の瞳に恋してる-”を終える頃には、オーディエンスは全員スカパラの虜だったと思う。
ドラムの茂木 欣一の「コロナ禍でも休まずやってきて、勇気をもって走り続けた我々。そしてこれからも歩み続けていけるように思いを込めた」と明かされた“カルペ・ディエム〜今⽇がその⽇さ”をボルテージMAXで演奏し終えると、昨年リリースした、Saucy Dogの石原慎也をゲストヴォーカルに迎えて話題となった“紋⽩蝶”をスカパラのみのインストVerで披露。オーディエンスは割れんばかりの歓声と拍手を送っていた。最後には恒例のGAMOの渋い声の煽りとセットの“Paradise Has No Border”をフロア全体、そしてオーディエンスの歓声とともに大合奏し、東京スカパラダイスオーケストラのステージは幕を下ろした。
さあ、4日目のVIVA LA ROCK 2023 STAR STAGE、セミファイナルの時間がやってきた。暗転し、次のアーティストを呼び込む合図がフロアに鳴り響くと、会場全体に歓声が巻き起こる。ナヲ、マキシマムザ亮君、上ちゃん、ダイスケはんと順々にステージに登場し始めると、フロアから轟く歓声はより大きくなっていく。そう、本日の STAR STAGEのセミファイナルを務めるのは、お察しの通り、マキシマム ザ ホルモンである。「ビバラ!! 最大の雄叫びを聞かせてくれ!!」とダイスケはんがオーディエンスを煽りスタートした、”握れっっっっっっっっっ!!”からオーディエンスとともに全開のヘドバンを魅せるホルモンのメンバー。たった1曲でフロアにいる全員を味方につけると、「ビバラ!! 最高じゃないか!!」とダイスケはんの声がフロアに轟く。
先ほどのヘドバンが準備体操だったかと思わせるくらい激しいヘドバン、そしてシャウト、デスボイスで、“シミ”、“「F」”を披露すると、MCでは「我慢して、乗り越えて戻ってきたビバラ!」とナヲが大きな声で話す。そして、「三度の飯より飯が好き!」とオーディエンスとともに大声を出した。ギア全開のホルモンについていこうとオーディエンスもこれでもかと首を振りその熱いパフォーマンスに色を添えていき、間髪入れず“アカギ”、“ぶっ⽣き返す!!”を披露。コロナ禍からぶっ⽣き返したビバラのメインステージで聴く“ぶっ⽣き返す!!”は最高だった。
MCでは、ダイスケはんが「同じ時間帯にGARDEN STAGEでDJをしているDJピエール中野に電話を掛ける」という一幕もあり、かなり盛り上がったフロア。残念ながら通話することはできなかったが、オーディエンスみんなでの「中野、ばっかじゃないの〜!」をボイスメッセージとして送ることができたから良しとしておこう。ホルモンの熱い想いと忘れかけていたモッシュやサークル、そして派手やかな火柱が上がる特効演出、彼らの代表曲でありバンドアンセムでもある“恋のスペルマ”を含む全8曲のパフォーマンスは、さまざまなカルチャー/ジャンルの集まったVIVA LA ROCK 2023に確実に色を添え、「音楽の未来にクラップ!!」というダイスケはんの言葉ともに終演を迎えた。
4日目STAR STAGEのトリを飾ったのは、ELLEGARDEN。正直彼らのパフォーマンスを言葉に表したくはないのだけれど。ずっと胸にとどめて味がしなくなるくらい噛み締めたいのだけれど。きっとそう思う人も少ないはずだと思う。それほど完璧で、カッコよくて、この場所にいれられたことを感謝した、そんなステージ。冒頭から溢れ出る感情と涙を抑えながら彼らのパフォーマンスを観ることになってしまった。
昨年末にリリースした16年ぶりのアルバム『The End of Yesterday』に収録された楽曲、つまりは、本当の意味でELLEGARDENが新たなキックオフを果たした新作の楽曲である“Breathing”からスタートした本ステージは、1曲目からオーディエンスが体を揺らし、これから起きる最高の事象に寄り添っていたと思う。細美武士の「行こうぜ!!」という言葉に大きな歓声が起こり、時空が歪んでしまうのではないかと思うほどのオーディエンスの大合唱。そんな私たちの心を決して置き去りにしないELLEGARDENのサウンドとパフォーマンス。流れるように、“Space Sonic”、”Supernova”、”風の日”を披露すると、細美が「ビバラだから来てるわけじゃなくて、俺が用があるのはお前らだけだから」なんて殺し文句を言うものだから、体の全神経がゾワッとしてしまう。
「せっかく復活したんだから、神様、向かい風でも雷でも落としてくれよ。そっちの方が面白い」と言葉を発して演奏した“Mountain Top”も、“The Autumn Song”も“Missing”も“ジターバグ”も、演奏した全ての曲が我々の心に向けて届けられていたし、「若い頃と同じように、これからもあらゆるところに喧嘩を売って、とんがっていこうと思ってるから」と真っ直ぐな想いを吐露する細美武士、ELLEGARDENは、何ひとつ変わっていなかった。それがすごく嬉しい。
パンパンに人が埋め尽くすさいたまスーパーアリーナで、人の感情も匂いも混じり合って、音楽という共通項だけで全員が自由にブチアガル。こんな幸せな空間は冷凍保存して保管しておくべきだと思う。おかえりELLEGARDEN、おかえりビバラ、おかえりみんな!――そんな気持ちになるライブだった。幕を閉じても止まらない拍手に、アンコールで再びステージに立った4人は“チーズケーキ・ファクトリー”を演奏。最後の最後まで、ELLEGARDENは全ての人間の心を置き去りにすることなく、最終日のSTAR STAGEへしっかりとバトンを繋いでくれたのだった。
テキスト=笹谷淳介
撮影=釘野孝宏
*マキシマム ザ ホルモン 撮影=浜野カズシ
*ELLEGARDEN 撮影=三吉ツカサ[Showcase]