VIVA LA ROCK 2024

総括レポート

自由な遊び場GARDENに響き続けた
最高な音楽とオーディエンスの笑い声
笑顔まみれの4日間がこれにて閉幕!

VIVA LA ROCK 2024の最終日は、曇天の空模様と強風が吹き荒れる開催となったけれど、最後まで雨が降らなかったのは、今日ここで音をかき鳴らしてくれたアーティスト、そしてここに集まってくれたみんなの笑顔が雨雲を吹き飛ばしてくれたおかげだと、そう思う。10+1回目の新たな一歩目を踏み出したVIVA LA ROCKの4日間は確実にオーディエンスの目と耳と心に最高の瞬間を届けていたし、ジャンルもキャリアも、垣根を越えて集まった総勢97組のアーティストたちは、「音楽」というものの素晴らしさを我々に教え続けてくれていた。音楽に境界線なんてないし、自由に踊って、自由に遊んでいい。GARDEN STAGEのフィナーレは、それを最も体現する場所になっていた。自由の遊び場であるGARDEN STAGEの存在意義、それは今日ここに来場してきた全ての人の笑顔が証明してくれている。さあ、次の10年へみんなで一緒に歩んでいこう。天気が悪い?! そんなの関係ない! 子どもも大人も楽しめばいいじゃないか! 音楽をかき鳴らすバンドが、目の前にいる! 僕たちはそれだけで楽しめるのだから。GARDEN STAGEの最終日はこれでもかというくらい多幸感に包まれていたぞ。

トップバッターで登場したのは、ポップなバンド名とは裏腹に、めちゃくちゃカッコいい音を鳴らすバンド・からあげ弁当。トイ・ストーリーの主題歌“俺がついてるぜ”が流れると登場した3人は、定位置に付くとボーカルの焼きそばが口を開く。「初の野外なんですよ。雲一つない、風一つない埼玉県に来れて幸せに思います!」と曇天の中ジョークをかまし、スタートした“チキン野郎”。<歌えこのロックンロールを/素敵な世界がお前を/優しく待っているからさ>と力強くアンセムを一発目から投下してくるものだから、こっちもそれに応えなければと拳を突き上げ、声を上げ、彼らの絶妙なロックサウンドに身を委ねる。「埼玉県は、こんなもんですか! もっと聞かせてくれよ!」と焼きそば(Vo&Gt)が煽る煽る、続けざまに“チキン野郎”。おいおい、盛り上げてくれるじゃないか。疾走感全開で進んでいく彼らのライブ。スリーピースロックバンドでドラムがツーバスって個性的すぎないか。でもこーたろーの叩くドラムがかなりいい味を出している。その音に呼応する春貴の唸るようなベースも最高に心地いいじゃないか。徐々に温まってきたGARDEN STAGE。「最高〜!!」と焼きそばが気持ちよさそう音を鳴らし歌っている。芝生の上では、自由に踊るオーディエンスの姿がある。

新曲“22”では子どもも楽しそうに踊っているし、ファンはピースサインを作って、“22”と表現。「名前のわりにカッコ良すぎやろと思ってる人も多いんちゃう? 次はらしくない曲をやります」とスタートした、“OH MY GOD”から、春貴のスキルフルなベースとこーたろーのヤバいドラムのジャムセッションのような始まり方をした“HERO”。焼きそばがMCの度に言っていたけど、お前ら、カッコ良すぎるやろ! 埼玉の人に謝らないといけないと話し始めたMCもなんだか愛があってよかった。「これから大好きになる予定です」と焼きそばが言うと、「それもまたアカンやろ」と2人がツッコミを入れるこの感じ。ああ、いいな。自然と笑顔になってしまう。

フォーリミのGENがVIVA! STAGEでのライブで彼らの名前を出したとXで話題になっていたけど、その事実に本当に嬉しそうにする焼きそばの姿も印象的だった。ただ、「焦らず俺ららしいスピードでやっていきます」と宣言し、風が気持ちいいからとアカペラでスタートした“そんな日々を生きていく”、何回歌うんだよと思っちゃった人もいるかもしれない3度目の“チキン野郎”。そして焼きそばはついにタンクトップを脱ぐ。「大好きな長渕の曲を弾き語りしてもいいですか。乾杯できる曲。おじさん、おばさんもおるからええやろ」と<乾杯! 今君は人生の/大きな/大きな/舞台に立ち>と弾き語り。オーディエンスは両手を上げ、手を振っている。かなりスピーディーに手を振るもんだから、焼きそばがすかさずツッコミ。会場は笑いで包まれる。俺たちにも乾杯にピッタリな曲があるからと“乾杯しよう”を披露し、「年齢なんて関係ないぜ、一緒にバカしよう」と熱い言葉を放ち、本日の4度目の“チキン野郎”でライブを締め括った、からあげ弁当の3人。オーディエンスはそんな最高の3人に大きな拍手を送っていた。

続いて登場するのは、ENTH。正直、彼らのライブは超厳戒態勢。これから起こる嵐に備えて、スタッフ一同、ステージの準備を続けている。芝生の外には、彼らのライヴでぶち上がりたいオーディエンスが殺到。リハから最後の最後までENTH一色に染まった、GARDEN STAGE。まあ、ENTHのライブなんだから、騒ぎたくなっちゃうでしょ。分かる。正直、自分もダイブしたかった。あの熱狂の中に入っていきたかった。音楽は自由だ。踊り方も自由だ。SEが流れて、3人が登場しただけでボルテージは最高潮。人が押し寄せる、パンパンのステージ。「ぶち上げていこうぜ! 外の人も中の人も好きに楽しんじゃって!」とdaiponが言葉をかけると「ウオー」と歓声が上がる。「どんなバンドか説明します」と“SCUM DOGS FART”を投下。ああ、カッコいい。

冒頭からオーディエンス全員が一緒に歌ってる、熱気を帯びるステージ。5年ぶりにビバラに帰ってきた彼らだけど、正直、彼らがいちばんビバラの自由さを理解しているように思えた。だって、テキーラだって飲んじゃうんだもん。トレーで酒を運ぶ、際どい恰好のお兄さんはキャッチーで愛嬌マシマシ。1曲目から完全にENTHの時間。さあ、皆さん、ここからはダイブのお時間ですよ。<死に場所は選べないけど/今日が僕の生きる最期の日でも>とシンガロングが発生すると、流れていくダイバーたち。流れて流れて、最前列まで運ばれて、帰ってくるみんなの表情が、最高に楽しそう。何度でもダイブするオーディエンス、いいね、これがライブだ。タオルとペットボトルが飛び交う、GARDEN STAGE。もちろんサークルが発生してモッシュだって起こっちゃう。

「ここのステージは音量制限があるらしいけど、楽器なしで俺たちのボンバイエで越えてみないか」とdaipon。ステージに轟くオーディエンスの「ボンバイエ」。“LOVE ME MORE”で大熱狂するGARDEN STAGE。笑いあり、お酒あり、ダイブあり。なんでもありのごちゃ混ぜ空間。「愛すべきバカども、また来世で会おうぜ!」と間髪入れず、ラストまでパフォーマンスを続けるENTH。絶景だった、曇天を吹き飛ばすみんなの笑顔、最高だ。ここで、ENTHからのサプライズ、最後に“BLESS”を追加で1曲。最後の最後まで飛び続けたダイバーたち、熱気ムンムンの濃厚すぎるライブは幕を閉じた。風が強いはずなのに、ENTHがもたらした最高の余韻は長い時間GARDEN STAGEに漂っていた。

ラウドな時間に酔いしれたら、次はスカの時間。極上のパーティーを我々に届けてくれたのは、MAYSON's PARTYだ。登場前から、リフトされてスタンバイしているオーディエンス。SEが流れ始めると自然発生したハンドクラップ。うんうん、いい一体感だ。その一体感をより強いものにした1曲目の“ONE”。オーディエンスは自由に声を上げ、彼らの奏でる最高のスカに酔いしれる。今回のステージでもダイバーはいい表情をしている。スカダンだってお手のもの。子どもだって踊っちゃう。子どもの隣でスカダンを教える、お父さん。いい英才教育ですね。初日にプロデューサーの有泉氏が話した言葉が蘇る。「子どもたちは未来の音楽ファンであり、未来のアーティストになるかもしれない、みんなの宝物です」。本当にその通りだ、未来ある子どもたちが目一杯楽しめる場所がGARDEN STAGEだと思うし、ビバラだと思う。MAYSON's PARTYのスカを聴いて、スカを好きになる子たちがたくさんいると思う。AYATOMOが高らかに「好きに遊んで帰れよ!!」と言うものだから、フロアの自由度も上がる。サークルが出来てモッシュして、ダイブして、彼らの音楽に呼応して楽しみ過ぎてるオーディエンスたち。濃厚だ、最高だ。

「ビバラ初出場! マジでめちゃくちゃ嬉しいです。みんな(ちょうど同じ時間帯にVIVA! STAGEに立つ)10-FEETを選ばず来てくれた」とAYATOMOが話すと、10-FEETのタオルを掲げるファンを発見。その姿に嬉しそうに「あとでチューしちゃおう!」と気持ちが前面に出ちゃうAYATOMO。ボルテージは最高潮。“OCEAN”でベースとドラムの骨太な低音をかき鳴らしたかと思えば、新曲の“SUN SHINE”を続けざまに投下。曇天のはずなのに、太陽の光が見えた気がした。GARDEN STAGEは晴天だ、彼らの鳴らす音で我々には間違いなく太陽の日差しが差している。

各々が好きに踊りまくるMAYSON's PARTYのオンステージ。「30歳になってからでもバンドが出来るんだ。俺たちは中年の星になりたい。必ず、あの中(アリーナの中)に入ってみせます!」と決意表明をし、ライヴはラストスパートへ。SAKIが「右手、左手、パクパク」と振りを教えてはじまった“Yummy Yummy”では、歌詞に合わせてその場にいる全員が両手をパクパクさせる。子どもも大人も存分に楽しむことができたパーティー。スカの楽しみを教えるとともにMAYSON's PARTYがこれからどんどん大きくなっていくことを予感させるライブは最終日のGARDEN STAGEに花を添えていた。オーディエンスはそんな彼らのスカの余韻に浸りながら次の場所へと向かっていった。

4日間、最高の笑顔と音楽、そして美味しいご飯とビールで彩られたGARDEN STAGEもフィナーレの時間。ラストを飾るのは、OKAMOTO'Sのオカモトレイジである。悠然と姿を現したオカモトレイジは静かにDJセットの前につく。BiSHの“オーケストラ”からスタートした、DJタイム。オーディエンスは各々、歌詞を口ずさみながら流れる音楽に身を任せている。矢継ぎ早に投下されていく、極上のJ-POPとJ-ROCK。きっと、この曲にはこんなバージョンもあるのかと新たな気づきがあったオーディエンスも多いのではないだろうか。DISH //がカバーした“WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント”、“ら・ら・ら”。初音ミクが歌う“人にやさしく”(by うどんゲルゲ 歌:初音ミク)。GARDEN STAGEはオカモトレイジが繰り出す楽曲に神経を集中させ、「次の曲はなんだ?」とワクワクしている。その表情からはまだこの日が終わってほしくないという気持ちが伝わってくるし、時間が経つごとに増えるオーディエンスの数には驚く。まだこんな大勢の人が踊りたいんだと思ったし、楽しんでいるみんなの姿を見ると少し泣きそうになるくらい嬉しくなる。

オカモトレイジの圧倒的すぎるDJプレイ。“マカロニ”(Perfume)からの“Space Sonic”(ELLEGARDEN)の流れなんて最高だったし、季節外れの“クリスマス・イブ”(山下達郎)から“マツケンサンバⅡ”(松平健)、“ダイナマイト”(SMAP)の流れが来た頃には、GARDEN STAGEはパンパン状態。サークルが発生するわ、大声で歌うわ、スカダンを踊ってる人、マツケンダンスを完コピしてる人、本当にいろんなオーディエンスがいたけれど、驚くのは流れてくる曲に全員が反応できちゃうこと。それはきっとオカモトレイジのセレクトの妙もあるだろうけど、改めて音楽ってすごく身近なものだったんだなと気づく。“恋愛レボリューション21”(モーニング娘。)や“走れ!”(ももいろクローバーZ)といったアイドルソングも“勝手にシンドバッド”(サザンオールスターズ)のような往年の名曲もたくさんの音楽が飛び交ったフィナーレの時間。楽しさは伝染する、最初は恥ずかしがっていたオーディエンスも最後には笑顔で踊っていた。いい意味でみんながバカになれたのだろう。最後は“オドループ”(フレデリック)が投下され、<踊ってない夜を知らない>という歌詞の通り、踊ってないオーディエンスが見当たらない、最高のGARDEN STAGEは幕を閉じるはずだったが……。

ステージに姿を表したスタッフが何やらオカモトレイジに耳打ちをしている。どうやらもう少し時間があるらしい。「えー、何をかけよう〜」と声を漏らすオカモトレイジと、「おー!!」と声を上げるオーディエンス。“LA・LA・LA LOVE SONG”が流れ始める。<まわれ まわれ メリーゴーランド>と言われたら、そりゃあサークルが出来ちゃう。ステージの上ではなぜかヨーヨーを回すオカモトレイジ。最後の最後は“世界に一つだけの花(Gewnky Remix)”(SMAP)でフィナーレを迎えた、GARDEN STAGE。最後に発生した世界一優しいサークルモッシュは絶景だった。

ご飯を食べながらその場に居合わせた人、大好きなアーティストのアクトを観にきた人、それぞれの目的で集った全員の笑顔で今年もキラキラした時間を作り上げたGARDEN STAGEの4日間。自由に遊んで、馬鹿騒ぎして、音楽をとことん楽しんで。来年もこの光景が見られたらいいな、やっぱりビバラは最高だ。最後は万歳三唱で締めたVIVA LA ROCK 2024のGARDEN STAGE。それでは、また来年!

テキスト=笹谷淳介
撮影=木村篤史