
総括レポート
ライヴハウス育ちの強者たちが集結
熱く盛り上がり続けたアリーナに
バンドマンの揺るぎない絆を見た
パンク/ラウドの猛者たちが大集結した最終日のビバラ。跳びまくり、首振りまくり、暴れまくり、筋肉痛になりまくり。こんなに素敵なゴールデンウィークの締めはない。明日から学校? 仕事? 知るか!
……という気合の入ったお客さんで埋め尽くされたさいたまスーパーアリーナに轟音が鳴り続けた1日、VIVA! STAGEで狼煙を上げたFear, and Loathing in Las Vegasに続いてSTAR STAGEのスターターとなったのはcoldrainだった。
荘厳なSEとともに幕を開けたステージは、Masato(Vo)の「What’s up, people?」という呼びかけから轟音の宴に変わる。“ENVY”でウォームアップを終えると、ハンズクラップとシンガロングが場内に鳴り渡る“Help Me Help You”とリフトが続出した“Cut Me”が早くも最初のピークを描き出した。
「俺、ステージ上にいるヤツ、だいたい知ってんだ。バカばっかだからさ」とこの日のラインナップに触れ、「そのオーディエンスなんだからもっとバカなんでしょ」と観客を煽るMasato。その言葉に呼応するように、ボルテージはさらに上昇。Masatoの指をくるくる回しながら「空けろ」という要求に、“NEW DAWN”ではステージ前に巨大なサークルが出現した。Katsumaのビートが、Y.K.CとSugiのツインギターが、RxYxOのベースラインが、重い塊となって体にバシバシぶつかってくる。“24-7”で生まれたウォール・オブ・デスが、肉体を使ったライヴの楽しみ方を伝えてくる。
そんな「全部乗せ」の展開は、まるでcoldrainによる「ラウドロックはこうやって楽しむもんだ」というガイダンスのようだ。「お互いのことを考えて、ちょっとだけ思いやりをもって、最後まで楽しんでください」というMasatoのメッセージにも、彼らがこの日、このスロットでステージに立った意味がこめられている。これまで数々のフェスでcoldrainのライヴを観てきたが、フェスというオープンな場に彼らのようなバンドが「入口」として立ち続けていることの重要さははかりしれない。ラストスパート、ドラマティックな最新シングル“Vengeance”を経て繰り出された“The Revelation”を歌い終えたMasatoは「ラウドロックはまだまだ生きてるぞ!」と叫んだのだった。
ハルカミライは、登場するなり橋本学(Vo)がステージ下へと降り、柵に登って「サンキュー、VIVA LA ROCK!」と叫ぶ。そのまま1曲目に“君にしか”を届けると、「準備体操」としてショートチューン“ファイト!!”を挟んで“カントリーロード”へ。さっそく上着を脱ぎ捨てた橋本がマイクスタンドを高々と掲げる。力いっぱいに叩き鳴らされる小松謙太(Dr&Cho)のドラムがドクドクと脈打つようにバンドを突き動かす中、いつの間にか今度は橋本に加えて関大地(Gt&Cho)もステージの下にいる。
もう一度“ファイト!!”を挟んで“俺たちが呼んでいる”、そしてそのまま“フルアイビール”に突入。「11回目のVIVA LA ROCK、開催っすよ。10回目は区切りだったりパーティみたいな感じっすけど、11、改めて1が付いている今日が、VIVA LA ROCKの新しいスタートです。やるしかねえな!」。そんな橋本の言葉とともに「♪ここが世界の真ん中〜」と“春のテーマ”へ。メンバー4人の声にオーディエンスの歌声が重なる。自己紹介をしつつ、もうひとりメンバーを紹介させてもらいます、と橋本。「そう、VIVA LA ROCKに集まったお前ら!」。それが単なる言葉のあやではないことは、始まってからだいたいフロア側にいる橋本を見ればわかる。ここにいる全員、ひとりひとりがハルカミライ。そのことを彼らは物理的にも表現し続けているのだ。
「1曲潰していいかな?」という須藤俊(Ba&Cho)の言葉から“フュージョン”を急遽ぶっ込んでその一体感をさらに高めると、“世界を終わらせて”ではスーパーアリーナ全体が反響するような大合唱が巻き起こった。橋本は言う。「人が集まる場所が、人の居場所になる。俺たちが集まった場所がVIVA LA ROCKになる。今日は一緒に作り上げよう」。その「一緒に」をハルカミライは全身全霊で体現し続けた。“Tough to be a Hugh”も、<この指止まれ止まれ>と歌う「エース」もそのために鳴り響く。最後の“To Bring BACK MEMORIES”を終えると、清々しい笑顔で「あばよ!」と叫んで、彼らは帰っていった。
目が覚めるようなビッグスケールの先制パンチ“WINNER”で力強くステージの幕を開けたのはMY FIRST STORY。サングラスをかけたHiro(Vo)が「もっともっと全力で楽しんでもらっていいですか?」と叫び、次々と楽曲を繰り出していく。大ぶりのリズムがオーディエンスを揺らす“MONSTER”ではHiroがステージの下へ。オーディエンスに体を支えられながら歌い切ると、さらに“REVIER”を歌いながら場内を歩き出す。お客さんとハイファイヴを交わしながらぐるりと1周。そんなパフォーマンスがみんなをさらに熱くさせ、でっかいシンガロングを生み出した。
Teru(G)のギターソロも決まった“アンビシャス”を丁寧に届けると、「今日は時間が短いのでMCカットします。そのぶんお前らの声を聞かせてくれ!」というHiroの言葉とともに“Missing You”へ。ここでも客席エリアから大合唱が巻き起こる。言葉はなくとも、ステージとフロアの間に最高の相互作用が起きている。その光景を見たHiroも「最高だな、おい!」と笑顔だ。そしてギターのカッティングが軽快な“蜃気楼”でオーディエンスを再び踊らせると、さらにアッパーなビートが炸裂する“東京ミッドナイト”を投下、問答無用で盛り上げていく。
そしてここでHiroが「今日、The BONEZ出てますよね?」と言って先ほどVIVA! STAGEでThe BONEZとして熱いステージを繰り広げていたJESSEを呼び込む。この両者がタッグを組んだ曲といえばそう、“アンダードッグ”だ。JESSEとHiroがまるでバトルのように向かい合って歌い、切れ味鋭い歌とラップで楽器隊の演奏から放たれるエネルギーをさらに巨大なものにしてみせた。そしてラストチューンは“ALONE”。熱のこもった音が最後の最後までオーディエンスを踊らせ続けた。
そして最終日も折り返し地点を超え、STAR STAGE後半戦の1発目として登場したのが、マキシマム ザ ホルモンだ。今日は朝からホルモンのTシャツを着ているお客さんをたくさん見た。単にホルモンのTシャツが目立つからかもしれないが、とにかく、メンバーが登場する前から、スーパーアリーナには腹ペコたちのむせ返すような熱気が充満していた。
「お前らの戦闘力がどんだけのもんか、見せてみろ!」。ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)の叫びから始まった1曲目は“「F」”。このスケールで広がるヘドバンの海は、何度見ても壮観だ。そしてナヲ(ドラムと女声と姉)のカウントから“鬱くしき人々のうた”へ。LEDビジョンに映し出された歌詞とともにマキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)の歌が突き刺さる。
「今日のメンツがヤバすぎる」とナヲ。ご飯食べる暇もない、と言いつつ「桜井食堂爆盛り上がり」と報告する。念のため記すと、桜井食堂というのはDragon Ash/The Ravensのサクこと桜井誠の店のことだ。そして「三度の飯より飯が好き」の自己紹介から昨年リリースされた新曲“恋のアメリカ”へ。だがここでアクシデント。機材トラブルが起き、演奏が中断してしまったのだ。珍しい。だがそんな不測の事態もさすがのアドリブ力で乗り切るのがホルモン。10+1回目のビバラを引き合いに「また1曲目からのつもりでやります!」(ナヲ)と自己紹介からやり直して、むしろさらに盛り上げていた。
そして今度は完璧に披露した“恋のアメリカ”を経て、ここからは鉄板の流れ。“ぶっ生き返す!!”で再び一面のヘドバンを生み出すと、マキシマム ザ ホルモン2号店ことコロナナモレモモのDJ・DANGER×DEERの能力を吸収した亮君からその能力(『しか』という言葉を聞くと大鹿化してしまう)を転移された上ちゃん(4弦)が変身して(このへんの成り行きは誰かわかる人に聞いてください)“チューチュー ラブリー ムニムニ ムラムラ プリンプリン ボロン ヌルル レロレロ”を披露。最後は恒例・恋のおまじないから“恋のスペルマ”。アクシデントもありつつ、新曲や新ネタもちゃんと挟みつつ、でも最後にはがっちり大団円にもっていく、さすがのステージだった。
続いてはなんと2015年以来のビバラ帰還となったWANIMA(当時はCAVE STAGEでの出演だった)。「ビバラ! ビバラ!」と声を上げながら登場したKENTA(Vo&Ba)、KO-SHIN(Gt)、FUJI(Dr)の3人が待ちに待ったオーディエンスを盛り上げ、「2015年を再現しつつ、40分フルフルでやりたいと思います!」というKENTAの言葉とともにスタートさせたのは、9年前の1曲目と同じ“Hey Lady!!”だった。そしてそのまま“雨あがり”へ。これも前回と同様だ。もっとも、曲は同じでも、バンドの立ち位置もお客さんの数もそのときとは比べ物にならない。でっかいオーディエンスの心に届けるべく全力で歌い、鳴らす3人。KENTAの顔は早くも汗だくだ。
KO-SHINのギターが鋭く空気を切り裂く“Japanese Pride”、FUJIの刻む性急なスネアが楽曲を走らせる“LIFE”、前のめりなスカのリズムにフロアが沸騰した“昨日の歌”(これも9年前の再現だ)、そしていつかの再会を願う名曲“エル”。息つく間もないほどに楽曲が畳み掛けられる。言葉はいらない、この楽曲と演奏の説得力が、WANIMAが9年かけて作り上げてきたものだ。
その後も矢継ぎ早に繰り出される楽曲たち。オーディエンスは曲ごとにノリを感じ取って、手を挙げたりジャンプしたり、体を揺らしたり。音と歌だけで、超濃密なコミュニケーションが生まれていく。KO-SHINがかき鳴らすギターにKENTAが「ラララ」と歌を乗せて突き進んで行ったのは“終わりの始まり”。つんのめりそうなリズムでさらに一段ギアを上げると、ここで投下された“BIG UP”が組んず解れつのさらなる熱狂を生み出した。
「懐かしい曲結構やったから、次は今のWANIMAを受け取ってくれ、よろしく!」(KENTA)と“眩光”へ。これまでと打って変わって、曲に込めた思いを必死に言葉にするKENTA。気迫のこもった演奏がここにきて会場を一気に熱くする。そして“ともに”、“いいから”のコンボでクライマックスを描き出しフィニッシュ……かと思いきや、KENTAが自分でアンコールを叫んでもう一度“Hey Lady!!”をプレイ。じつはこの流れも9年前のまんま。本当に40分ぴったり、すべてを出し切って帰っていったWANIMAの3人であった。
そして、4日間にわたるVIVA LA ROCK 2024もついに最後のアクト。大トリを任されたのは2016年から5回連続出演、猪狩秀平(Gt&Vo)率いるHEY-SMITHだ。“Dandadan”で幕を開けると、「いくぞ、VIVA LA ROCK!」という猪狩の一言から“Say My Name”へ。スーパーアリーナの至るところで拳が突き上げられる中、次々と楽曲が重ねられていく。何よりすごいのはオーディエンスの前のめり感。騒いで、騒いで、騒ぎまくった1日の終わり、疲れなんて感じさせないというか、疲れているからこその底力なのか、とにかくみんな超貪欲。“Fellowship Anthem”でフロアから上がった声の声量、ジャンプした高さ、ダンスのステップ、どれもとんでもなかった。
イイカワケンのトランペットソロを挟み、猪狩が叫ぶ。「お前ら、明日から仕事とか学校とかいっぱいあるやろ。その前に、歌え、踊れ、騒げ!」。そうやってガンガン栄養を注入しながら、HEY-SMITHのライヴはどこまでも高みへ駆け上っていく。“Into The Soul”から“Endless Sorrow”に突入してクラウドサーファーを続出させ、YUJI(Vo&Ba)のリードヴォーカルと猪狩のギターのストロークがバチバチにやり合う“Over”では巨大なサークルモッシュが発生。ステージ上に目をやれば満(Sax)が床でのたうちまわりながらマイクに向かって叫んでいる。ステージの上も下も、ここに全部置いていくつもりだ。
“Inside Of Me”を終え、「おまえら、やりたいことやってるか!」と猪狩が叫ぶ。今回、大トリのオファーを受けて「なんで!?」と思ったという彼。プロデューサーに理由を尋ねると、コロナ禍で挑戦を続けてきたビバラは、同じくコロナ禍にあって自分たちの意志を貫いてきたHEY-SMITHを一緒に闘ってきた同志のように思って声をかけたのだという。音楽性だけでなく、バンドの精神性に対するリスペクトも含めてオファーしてくれたことに感謝をしつつ、「俺らにトリ任せてよかったやろ!」と笑顔で叫んだ猪狩。フェスの物語も、もちろん自分たちの物語も、全部背負ってここに立つHEY-SMITHは、なんだかいつも以上にでっかく見えた。
ここに集まった全員に向けたメッセージソング“You Are The Best”、そしてここに来てオーディエンスのハートに熱い炎を灯す“We sing our song”とHET-SMITHの姿勢を象徴する楽曲を畳み掛けると、最後は“Goodbye To Say Hello”と“Come back my dog”のコンボで締め。だがそれだけでこの4日間は終わらない。アンコールに応えて再びステージに戻ってきた6人。「自分たちのフェスじゃないから、アンコールはやらんでおこうと思ってました。でも袖に今日出たバンドマンがみんないて、嬉しくなりました」という猪狩の言葉から演奏されたのは“Don’t Worry My Friend”。そして残り1分ある、と言ってもう一度“Come back my dog”。「袖にいるバンドマン、出てこい!」という猪狩の声に反応してひとり、ステージからダイヴしていったやつがいる。誰かと思ったらハルカミライの橋本学だった。さすがである。終演後のバンドマン勢揃いの記念撮影まで、HEY-SMITHだから、ライヴハウスで戦ってきたバンドマンだからこそ作れるフィナーレの光景がそこには間違いなくあった。
テキスト=小川智宏
撮影=釘野孝宏
撮影(マキシマム ザ ホルモン)=浜野カズシ