嵐のような、けれど心の奥底に
感動を刻み込む圧巻のアクト!
本番前のサウンドチェック終わりに、「音楽に国境なんて関係ねーんだよ! だからお前らも魂でぶち込んでこい!」との子(Vo&G)が叫んだのが象徴的だったけれど、今日のステージに対するメンバーの気合いの入り方はもの凄いものがあった。そういう時のかまってちゃんは、とんでもなく素晴らしいライヴをするか、空回って自爆するかどちらかなのだけど、今日はもう文句なく前者。1曲目の“ねこラジ”から、前述の通り気合いの漲りまくったメンバーのテンションがちゃんと音に結実していく。センターで客を煽るmono(Key)と衝動的ながら安定感のあるちばぎん(B&Cho)&みさ子(Dr)のリズム隊、ギターを掻きむしりながら想いの丈を全部ぶつけていくかのようなの子の歌。攻撃的でエネルギッシュで、でもきっちりオーディエンスに対して開いたロックの塊が爆発していく。“美ちなる方へ”、“23才の夏休み”と曲が進むにつれて、初めは前方ブロックに集中していたオーディエンスの熱狂も後方ブロックへと伝播していった。
「まだまだーっ! ウワァーーーッ!!」と、半分言葉にならない叫びも混じったmonoのMCから、ほとんど息つく間もなく次の曲へ。MCでグダッとなることも多いかまってちゃんだけど、今日はとにかく自分達の音楽でオーディエンスを圧倒するんだという強い決意と気概が伝わってくる。
「VIVA LA、VIVA LA、ROCK FESTIVAL!」というループから始まった“黒いたまご”では、ヘッドセットをつけたの子が跳び回ったりシンセをいじったりしつつ、大きく体を揺らしながら歌と音を放つ。もの凄く天井の高いVIVA! STAGEいっぱいに音が回り、ダンサブルな四つ打ちと共にスケールの大きな音像が展開していく様はまさに圧巻。そのまま“ロボットノ夜”へとなだれ込んでいったこの中盤は特に素晴らしかった。一筋縄では行かないの子の類稀なアレンジセンスも、バンドとして様々なことがあっても枯れることのない初期衝動も、そしてその音の洪水の中に神聖な「何か」を掴み獲ろうとする願いのようなものも、すべてが純粋に音楽として爆発していた。
ラストソングを前にオーディエンスとひとしきりコール&レスポンスを繰り広げた後で掻き鳴らされた“ロックンロールは鳴り止まないっ”が、とても美しかった。ささくれ立ったノイジーなバンドサウンドとmonoが奏でる凛とした鍵盤のフレーズ、文字通り全身全霊を懸けて歌い放つの子のヴォーカルが巨大な塊になってステージから襲いかかるその様は、衝動とエネルギーの爆発そのもので、ロックンロールをやる理由、そしてロックンロールを求める理由の、最も原始的で純粋な形を目撃しているかのように感じられた。
「お前らサイコーッ! 俺、ホントに今、人生で3番目くらいに幸せっ」と言い残して、かまってちゃんはステージを去った。嵐のような、だけど確実に心に深い爪痕を残す、ロックという表現の根幹が鳴り響いたアクトだった。
(有泉智子)
セットリスト