確かな成長、確かなビート。

ceroが作り出した、祝祭空間!

「セロ・セロ・セーロ」という、いつものSEにのって陽気にVIVA STAGEに登場したのはcero。高城晶平(Vo&G&flute)、荒内佑(Key&Sampler&B)、橋本翼(G&Clarinet)の3人はもちろんのこと、片想いやなつやすみバンドで活躍するMC.sirafu(Tp&Pan)をはじめとして、あだち麗三郎(Sax)、厚海義朗(Ba)、光永渉(Dr)、東京インディーポップシーンの重要人物達をいいとこどりしたような豪華なサポートメンバーも勢揃い。

チェンバーポップを思わせる牧歌的なイントロから演奏は熱を増し、どんどんスケールの大きな音像が作り上げられていく。“マウンテン・マウンテン”のタイトル通り、山登りするかのように足踏みをしながらパフォーマンスする、高城。曲の持つ物語を、演奏はもちろんのこと、己の身体を通して十二分に表現しようとするシアトリカルな演出にどんどん観客も引き込まれる。

次は、タイトなビートとグルーヴがブラックなムードを醸し出した“exotic penguin night”。橋本は切れ味の鋭いファンキーなカッティングを刻む。アルバムに収録されたヴァージョンとはかなり雰囲気が違うダンサブルなアレンジである。途中、MC.sirafuのマイルス・デイヴィス風ソロも披露され、天井からは柔らかな午後の光が差し込んでいるというのに、VIVA! STAGEの上に不穏な夜の世界が帳を下ろす。

長らく「知る人ぞ知る」という枕詞で称されることの多かったceroだが、ここ最近の精力的な活動を経て、どんどんバンドのスケールが大きくなり、より普遍的な力強さを身につけてきていることを感じる。この日は“わたしのすがた”の前にギターの橋本のアンプが故障してしまうというトラブルがあったのだが、メンバー達は機転を効かせ、サックスのソロやリヴァーブを効かせたヴォーカルで音楽を止めることなくその場をつなぎ、ギタートラブルをチャンスに変えた。結果、スペシャルなアレンジになった“わたしのすがた”では、荒内とMC.sirafuが並んで演奏するエレクトリック・ピアノとクラビネットの粘っこいリズムがオーディエンスを揺らしていく。ディアンジェロなどの90年代後半から00年代のR&Bを彷彿とさせる一曲、“Yellow Magus”ではファットなビートに乗り踊りまくるメンバー。気がつくと観客も自然とハンズアップして、すっかりニューヨーク辺りのクールなブロック・パーティーのような雰囲気だ。

バンドメンバーの紹介を経て始まったのは“Contemporary Tokyo Cruise”。ステディに紡がれるリズムの上に幻想と妄想が交錯するオルタナなカオスがもやもやと広がっていく。トライバルなリズムとスティールパンの響きに、会場全体がバウンシーに飛び跳ねる。そこに居合わせた誰もが踊らざるを得ない、そんな祝祭的な空間を作り出していった。「ceroでした、また会いましょう!」笑顔でそう言い放ち、この日、ceroがラストに選んだのは“マイ・ロスト・シティー”。失われてしまった都市の幻想を駆け抜け、どんどんスピードを上げていくceroは「未来」で何に出会うことになるのか……そんな先のことが楽しみになる素晴らしいライヴだった。

(江波戸 日)

セットリスト

  • 1. マウンテン・マウンテン
  • 2. exotic penguin night
  • 3. わたしのすがた
  • 4. Yellow Magus
  • 5. Contemporary Tokyo Cruise
  • 6. マイ・ロスト・シティー