「無敵のバンド」が

魅せた最高のフィナーレ

いよいよVIVA LA ROCKも3日間のクライマックスへ! 初開催のロックフェスの記念すべき大トリを務めるのはサカナクションだ。巨大なアリーナで体感する彼らのライヴは、まさに無敵感に満ちたものだった。

暗転し、“Ame(B)”のフレーズと大歓声が鳴り響く中、5人がステージに現れ、アリーナは1万8千人の大歓声に包まれる。まず彼らが披露したのは、最新鋭のエレクトロモードで新たにミックスした“Ame(B) -SAKANATRIBE MIX- VIVA LA ROCK ver.”。山口一郎(Vo&G)を中心にヘッドフォンとサングラスを装着した5人が一列に並ぶラップトップスタイルでのパフォーマンスだ。強烈な低音のビートが服の裾を揺らし、緑色のレーザーが舞う。色とりどりの照明がビートと曲展開にシンクロしてステージを染める。まさに光と音の饗宴だ。フロアの全員が飛び跳ね、床が揺れる。そして続く“ミュージック”では、ブレイクの暗転を挟んで曲中でバンドセットへ転換する彼らならではの演出を見せ、大きな歓声が上がる。

一糸乱れぬハンドクラップが生まれた“アルクアラウンド”から「ありがとう!」と告げて“夜の踊り子”、“モノクロトウキョー”。岩寺基晴(G)がギターを掻きむしり轟音を鳴らす。続く“アイデンティティ”では草刈愛美(B)と岡崎英美(Key)と岩寺、そしてオーディエンスの「♪ラーラララーラー〜」の大合唱が巻き起こり、そこから“ルーキー”へ。まさに鉄板のセットだ。ぎっしりと埋まったオーディエンスを前に、ノンストップで、次々とキラーチューンを投下していく。

ここ数年はロックフェスのヘッドライナーを飾ることも増えたサカナクション。そのたびに、彼らは大会場をひとつにし、興奮の絶頂がずっと続くようなショーを見せてきた。彼らにできないようなやり方でロックとダンスミュージックを昇華させ、メンバーだけでなくPAやライティングも含めたチーム・サカナクション全員で「総合芸術」としてのステージを作り上げてきた。奔流のようなグルーヴがオーディエンスを揺らし続けるライヴを見せてきた。この日のステージも、そうして彼らが築き上げてきた唯一無二のスタイルを見せるものだ。“ルーキー”の高揚感がピークに達したところで「VIVA LA ROCK!」と山口が叫ぶ。汗をしたたらせながら笑顔で歌うその姿は、もはや風格のようなものすら感じさせる。トップギアのまま駆け抜けた “Aoi”から山口がアコースティックギターに持ち替え、「次で最後の曲です」と披露した“グッドバイ”で、本編は終了。

アンコールに登場した山口は「鹿野さんとは、2007年からの付き合いで――」と、フェスのプロデューサー・鹿野淳との関係を語った。初めてのインタヴューで「自分にとってのロックとは何か?」を問われたこと、そして、同じ質問を訊き返したこと。「このVIVA LA ROCKが鹿野さんにとってのロックなのかなって。会場を回って、みんなの顔を見て、思いました。だから僕らも、この先も、自分たちのロックを見つけていかなきゃいけないのかなって。口惜しいけど、背中を押されたような感じがしてます」

そう告げて、最後に披露したのは“ナイトフィッシングイズグッド”。感無量のオーディエンスを前に、鹿野淳とオーディエンス全員と記念写真を撮り、ライヴは終了。

まさに圧巻のステージだった。今のサカナクションというバンドが持つ特別な求心力を改めて感じさせる1時間。こうして彼らは、初開催となったVIVA LA ROCKに、強く記憶に残る、最高のフィナーレを飾ってくれた。

(柴 那典)

セットリスト

  • 1. Ame(B) -SAKANATRIBE MIX- VIVA LA ROCK ver.
  • 2. ミュージック
  • 3. アルクアラウンド
  • 4. 夜の踊り子
  • 5. モノクロトウキョー
  • 6. アイデンティティ
  • 7. ルーキー
  • 8. Aoi
  • 9. グッドバイ
  • EN. ナイトフィッシングイズグッド