「残り全部の命を使え」
鳴り響いたtacicaの力強い歌!
1月25日の「三大博物館」のライヴを最後に苦楽を共にしたオリジナルメンバー、坂井俊彦(Dr)が脱退。この日は「限りなく透明な果実」のニシカワユウスケ(Dr)をサポートに迎え、VIVA LA ROCK最終日・VIVA! STAGEの1番手としてステージにあらわれた。約4ヵ月ぶりのライヴ、彼らが1曲目に選んだのは彼らのインディーズ・1stアルバム『Human Orchestra』に収録されていた、“HERO”。原点に立ち返り、また新しくはじめようと決意した、そんなtacicaの想いが如実に伝わってくるチョイスだ。身体を根幹から揺らす雄々しくも優しいグルーヴと爆発するエモーション。tacicaはtacicaらしさを失わず、よりパワーアップしてステージに帰ってきた。閃光のようなライティングがステージを切り裂いた“CO.star”、ニシカワのコーラスが曲の持つはじけそうな切なさをさらに限界ギリギリまで増幅させる。“ハイライト”では、猪狩翔一(Vo&G)の優しい歌声と天井から差し込む朝の光が見事に溶け合い、VIVA STAGE全体にあたたかなヴァイブスが広がっていく。
「すっごい楽しいです。ありがとう」と、オーディエンスに呼びかける猪狩。サポートメンバーのニシカワを紹介し、何か言葉を続けようとするものの「たくさんしゃべろうと思ったんだけどね、ダメでした(笑)。曲やります、よろしく」とはにかむ。その不器用な様子も含めてtacicaの音楽だ。“人鳥哀歌”で、拳を大きく目一杯振り上げるオーディエンスの様子に小西悠太(B)はうれしそうに頷きながら、ステージの前方まで飛び出していく。お互いの呼吸を確かめるように向き合いながら演奏する3人、火花が散るような全力のステージは続く。
「今日久々に大きな地震があって。俺、駅のホームに居たんだけど……たいして驚かなくなっちゃったなぁと思って。だけど、もしかしたらそこで終わってたかもしれないなぁなんて思ったりして」――最後の1曲を残し、ポツポツと語り始めた猪狩。「だから、何を言いたいかというと『すごく楽しんだ方がいい』っていうことです。そんなのわかってるよって、言うかもしれないけどさ(笑)」。そう言って、演奏されたのは“DAN”。我々が暮らす日常の脆さ、そしてそのかけがえのなさをtacicaは嫌という程、知っている。「残り全部の命を使え」――いつ終わるかわからない、だからこそ、今ある命を輝かしい瞬間のために燃やす……そんな猪狩の力強い歌声はこれ以上ない説得力を伴って、VIVA LA ROCKのステージに鳴り響いた。
(江波戸 日)
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