VIVA LA ROCK 2019

REPORT

KICK OFF VIVA!!! 【北浦和KYARA編】
2019年11月21日(日) ライブハウス北浦和KYARA
出演:WOMCADOLE / おと. / 東京初期衝動 / ドミコ / popoq / ユレニワ (※五十音順)

11/24(日)にVIVA LA ROCK開催に向けてのキックオフイベント「KICK OFF VIVA!!!【北浦和KYARA編】」が開催された。
KYARAといえば、これまでthe telephonesやドミコなど、埼玉ローカルな素晴らしいロックバンドを輩出してきた、ビバラの地元である埼玉県を代表するライヴハウスである。残念ながら来年の1月をもって閉店が決まっており、KYARAでは3度目の開催となる今回がこの地においての最後のビバラのイベントとなった。

前回同様、ドリンク代のみで楽しめるチケットフリーの開催となった今回。「Thanksgiving day=感謝祭」間近ということもあり、ロックとロック好きのすべての人達への溢れんばかりの感謝が込められたロックパーティには、「WOMCADOLE」、「おと.」、「東京初期衝動」、「ドミコ」、「popoq」、「ユレニワ」という、新進気鋭の全6組のアーティストが集結し、北浦和KYARAで最高のロックを鳴らした。

この日のトップバッターを飾ったのは、埼玉県内在住10代限定、明日の音楽アーティストを目指す人たちを応援するオーディション「ティーネイジサイタマ2019」でグランプリを獲得した「おと.」。メランコリックで繊細な音色の中で光る、毅然とした歌声を持つシンガーソングライターである彼女がビバラのキックオフを宣言するように凛とした歌を届けてくれた。
続いては「ユレニワ」が登場。フロントマンであるシロナカムラ(Vo&G)の喉元から搾り出されるようにして放たれる歌唱と、息の合ったエッジの鋭いアンサンブルでフロアのボルテージをぐんぐんと上げていく。その加速度的に上がっていく彼らのライヴは、短い時間の中でも確実に爪痕を残したはずだ。

おと.

ユレニワ

ちなみに各アクトの転換の最中は、2階のカフェエリアにて様々な催し物が展開された。KYARAの店長自らが全身黒タイツを装い、その長髪を「筆」に見立てて行われたのは、書き初めならぬ「書き終え」。まるでコントのような摩訶不思議な光景に笑いが巻き起こり、「ロックってこんなに大変なんだな」というつぶやきも起こるような壮絶なパフォーマンスが繰り広げられた。
後半のインターバルでは「KICK OFF VIVA!!!」恒例の「出演アーティストやスタッフによる餅つき」も行われ、たくさんのオーディエンスがつきたての餅を堪能した。どちらもやや季節を先取りしてはいるものの、冬の寒さを優しく温めるような親近感満載の、ビバラらしい試みだった。

さて、3組目に登場したのは隣県である群馬から駆けつけた「popoq」。シューゲイズやポストパンクを軸にしたサウンドと、強度の高いメロディーラインを武器にした上條渉(G&Vo)のボーイソプラノが高純度で混ざり合うアクトで、日本のバンドが00年代以降ロックに内包させてきた「孤独」を独自の解釈で刹那的に爆発させる、素晴らしいライヴだった。
続いて登場したのは「東京初期衝動」。4人組ガールズバンドという肩書きからは想像できないバンド名と、ビバラでもお馴染みの銀杏BOYZの如く衝動に満ちたパフォーマンスは初見のオーディエンスにも強い印象を与えた。屈指のライヴアンセム“再生ボタン”を絶叫する椎名ちゃん(Vo&G)と、それに呼応してダイブやモッシュが誘発されるフロアとの間に、壁は存在しなかったように思う。

popoq

東京初期衝動

ラスト2組。
その先陣を切ったのは11月20日にリリースされた『黎明プルメリア』でメジャーデビューを果たしたばかりの「WOMCADOLE」。自身をスーパーロックバンドと形容するその姿勢はただの虚勢ではなく、瞬間沸騰&最大出力で鳴らされる力強い演奏と目の前の「あなた」に対して届けられる樋口侑希(Vo&G)のまっすぐな歌は、この日のラインナップの中でも特にど真ん中のロックンロールを射抜くもの。「夜明けっていうのは革命の合図だ!」という言葉が顕著だったように、来年のビバラの開幕を宣言するにふさわしい最高の狼煙上げだった。
そんなキックオフパーティーのトリを任されたのは、KYARAをホームグラウンドに持つ「ドミコ」。初っ端からさかしたひかる(Vo&G)がジャック・ホワイト並みのプログレッシヴなギタープレイをかまし、長谷川啓太(Dr&Cho)による横ノリのダンスビートの応酬でオーディエンスをあっという間に惹き込んでいく。独特のオーラで「言いたいことは全部音楽の中で言うんだ」ということを体現するが如く、ほとんどMCを挟まずに“こんなのおかしくない?”“ペーパーロールスター”で本編を締めくくると、アンコールにもきっちりと応え、颯爽とステージを去っていった。

WOMCADOLE

ドミコ

埼玉の地に根ざしたロックフェスであるビバラが、こうしてチケットフリーのイベントを行うこと、そして6組のアーティストが「それぞれ異なる形のロック」で多幸感溢れる1日にしてくれたことは、ますますカオスに、そして豊潤になっていくであろう2020年代以降の日本の音楽シーンへ向けても「最高のキックオフ」となった。来年で7度目を迎えるVIVA LA ROCKが今から待ち遠しくなる、熱くもクールなパーティーだった。

テキスト=栢下錬(MUSICA編集部)
撮影=エモトココロ(twitter @kokoroemoto