VIVA LA ROCK 2019

REPORT

KICK OFF VIVA!!! 【渋谷WWW編】
2020年1月21日(火) Shibuya WWW
出演:SPARK!! SOUND!! SHOW!! / ハルカミライ / the band apart (※五十音順)

昨年11月の北浦和KYARA編に続き、VIVA LA ROCK 2020へ向けて2度目の開催となった「KICK OFF VIVA!!!渋谷WWW編」。今回は平日の開催にもかかわらず、開場前からShibuya WWWには長蛇の列ができていた。それもそのはず、この日集まったのは「SPARK!! SOUND!! SHOW!!」、「ハルカミライ」、「the band apart」という、一度はこの組み合わせで見てみたかった対バンライヴ。北浦和KYARA編では新進気鋭のアーティスト達がフレッシュなロックの風を吹かせてくれたが、こちらはロックの最前線でラジカルでソウルフルな旋風を巻き起こし続けている屈指のライヴバンド達だ。この日のコンセプトである「切れ味」と「エグ味」をこれほどまでに体現する3マンが他にあるだろうか⁉ と思わせるような豪華な顔ぶれが揃い、新年早々からロックの真髄をまさに骨の髄まで味わい尽くせるような、来るビバラに向けてキックオフの号令を鳴らすにふさわしい壮絶なロックパーティーとなった。ここではその最高のロックパーティーをレポートする。

まず一発目に登場したのは「SPARK!!SOUND!!SHOW!!」。
昨年9月にリリースしたセカンドフルアルバム『NU BLACK』のツアーファイナルにして初の単独公演を同月11日にWWWで行ったばかりの彼ら。初っ端から「4人組暴走族、ノーヘルメットでお願いします」というタナカユーキ(Vo&G)の掛け声と共にバイクのエンジン音をサンプリングした“†黒天使†”をプレイすると、続いて『NU BLACK』のオープニングナンバーである“GOD SPEED”のメタルやハードコアを軸とした激しくもテクニカルな演奏と半狂乱のパフォーマンスでフロアの熱量をグングン上昇させていく。
“感電!”ではフロアの2階席までメンバーがリフトされ、勝手にオーディエンスのお酒を飲み始めたり、ライヴ後半ではそこに脚立を立て始める始末――その奇天烈で自由奔放なスタイルはライヴパフォーマンスだけでなく、音楽性も然り。“BPM169”ではイチロー(Dr/Cho/169)のドラミングが躍動的に暴れ回り、ヴォーカルパートまでこなしたかと思うと、“アワーミュージック”では青春パンクのようなストレートで熱いメッセージを放ってくる。
まさにアヴァンギャルドとポップが同居したようなカオスっぷりなのに、その一音一音のキレが鋭く、なおかつ深くぶっ刺さってくるのは、今の彼らに勢いがあるという確かな裏打ちだ。メタルもラップもポップも丸ごと飲み込み、その場をロックの快楽のみが漂う空間に変貌させる強烈なアクトに、震えながらも固唾を飲んだ壮絶なライヴだった。

SPARK!!SOUND!!SHOW!!

続いて戦隊モノのヒーローが登場するようなパフォーマンスでステージに姿を現したのは「ハルカミライ」。
昨年12月には幕張メッセでのワンマンライヴを完遂し、フェスに出れば持ち前の溌剌とした熱量溢れるパフォーマンスで会場を一気にホームグラウンドにしてしまうような彼らだが、この日はいきなり橋本学(Vo)が客席にダイブして“君にしか”が始まると、オーディエンスからは歓迎するように特大のシンガロングが巻き起こった。
まるで一番手のスサシを超えんとでも言うように橋本が人の波の上でPA卓前まで侵入すると、“カントリーロード”では関大地(G&Cho)がアンプの上に登りギターソロを雄大に披露する。まるでブレーキがついていないジェット機のようなエネルギー全開の姿勢で進んでいく彼らのライヴは、いつだって無軌道で一直線だ。そんな序盤からクライマックスのようなオンステージに身体を震わせながら果敢についていくフロアの光景はまさに、橋本が“ファイト!!”の曲入りで言い放った「音が鳴ってても鳴ってなくても関係ねェ、音楽は心意気だわ!」という言葉がとてもしっくりきた。
今の彼らがこれだけ求心力を獲得しているのは、常に今を全力で生き切り、不特定多数ではなく一人ひとりの心にガツンとホームランを打ち込んでいるからである。持ち時間40分の間に通常のセトリに加えて “俺達が呼んでいる”“Touch to be a Hugh”を2回、“ファイト!!”に至っては3回披露し、予定調和をブチ壊す痛快さを残してステージを去っていった。

ハルカミライ

そんなロックの狂乱が続く中、インターバルにはキックオフ恒例の新春餅つき大会が開かれた。直前までライヴをしていたハルカミライをはじめ、アーティスト達のつく餅が食べられるのもビバラならではの奇妙に楽しい醍醐味だ。きな粉や醬油、海苔の香りがほのかに漂い、喉に詰まらせないように一呼吸置いてから笑顔でフロアに戻っていくオーディエンスを見ているだけで、冬の寒さがほっこり温かくなった。

そしてこの日のトリを務めたのは「the band apart」。
今年で結成22年目に突入した彼らだが、前2組に引けを取らないフレッシュさと、ベテランらしい安定感のあるパフォーマンスでこの日の「切れ味」と「エグ味」を限りなく体現するライヴを見せつけた。まず1曲目にプレイされた “夢の中だけで”では、エヴァーグリーンな曲調の中に原昌和(B&Cho)の激烈なソロパートを挟む珍奇な展開を披露。アレンジは恐ろしく緻密なのに、楽曲自体はキャッチーさを放つ彼らの音楽には、常に驚きと発見が尽きない。
この曲を含め、昨年10月にリリースされた新作EP『POOL』に収録された全4曲が主軸となるセットリストでバンドの最新モードをきっちりと提示する一方で、屈指のアンセムである“Eric.W”では縦横無尽なグルーヴを生み出して一気にダンスフロアへとスイッチする。そして小暮栄一(Dr)のタイトなハイハットさばきから“夜の向こうへ”に移行すると、畳み掛けるようなアンサンブルの応酬が降り注ぐ――初期のパンキッシュな音楽性からジャズやフュージョン、ソウルなどを吸収し、『2012 e.p.』、そして『街の14景』以降は日本語詞も取り入れてきた彼ら。そうしたフレキシビリティをもって2016年からは「the band apart(naked)」名義でアコースティック編成での音楽性も開拓してきた22年の歳月に対して、荒井岳史(Vo&G)は「長くやっててよかったと思うのは、こうやってはじめましての人と出会えること」と語り、4月に野外自主ライヴイベントを開催することをアナウンスした。
アンコールでは“beautiful vanity”のアウトロで明滅する轟音と残響音がいつまでも木霊し、まさにここからさらなる景色が広がっていくような、円熟に加え、希望に満ち満ちたアクトだった。

the band apart

3者3様によるロックとロックが呼応し、ぶつかり合い、多幸感溢れるカオスな空間が作り出された今回のKICK OFF VIVA!!! 渋谷WWW編。前回の北浦和KYARA編も含めて、5月のVIVA LA ROCK 2020本祭に向けて最高のキックオフとなったことは間違いない。さぁ、今年のビバラではどんな景色が見られるのだろう? 最高のロックの空気と景色を共に作ろうという願いが、この日のパーティーにも込められていた。

テキスト=栢下 錬(MUSICA編集部)