誰も孤独にさせないステージが
此処にある
本日のCAVE STAGE、2番目の登場は、それでも世界が続くなら。何やらCAVE STAGEにはかつて経験したこともないような空気が立ち込めていた。じっと何かを待っているような独特の静寂――間違いなく、彼らの音楽と言葉を待つ人々がここには集っていた。
「音楽って自分のためのものだと思う。俺も自分でここに来ました。だから自分のために楽しんで欲しい……自分のために、楽しんで欲しい」と静かに、そして少しぶっきらぼうに篠塚将行(Vo&G)が話すと、ライヴは“シーソーと消えない歌”からスタート。心の琴線に触れるようなギターのアルペジオと共に響く篠塚の歌声。曲の中盤から鳴り響く、残響感のある歪み切った音像。そのどれもが、人が抱える「痛み」をオーディエンスに痛烈に叩きつける。続く“参加賞”では、「生きてる証拠が欲しい」という感情を鬼気迫る表情で歌い、叫ぶ篠塚の姿があった
詰めかけたオーディエンスを見渡すと、ほとんどの人が微動だにせずにステージを見つめていた。歪んだ音の塊に面を食らっているというよりは、彼らの言葉を自らの中で反芻しているのだと思う。彼らがステージから放つ言葉の数々は、一見、すべてに諦観を覚えた人の言葉にも聴こえるがそうではない。誰も触れようともしない人の深淵までをも、音楽で照らし出す覚悟の塊なのだ。それは篠塚自身が絶望を知っているからこそ紡ぐことのできた言葉なのだと思う。だからこそ、彼らの言葉は僕らに説得力を持って染み渡ってくるのだ。
ライヴも後半に入り、まず披露されたのは、“僕らのミュージック”。菅澤智史(G)の叫びにも似たギターが涙を誘うほどに印象的に耳に残った。そしてラストに披露されたのは、ミュージックビデオの内容も話題となった“水色の反撃”。感情が最高潮まで昂ぶり、ギターをフィードバックさせた轟音……最後には篠塚が自らドラムを連打する場面もあった。曲が終了し、まだ残響の残るステージを多くの人が見つめる中、「ありがとうね」と篠塚は言ってステージを去った。そのライヴ中とは違う柔らかな表情こそ、音楽に救われてきた彼の顔なのだろう。同じような表情がオーディエンスにも見てとれた。まさに、救いのステージが此処にあった。
(黒澤 圭介)
セットリスト