- 5.6 MON 12:00-12:40 STAR STAGE
- キュウソネコカミ
悔し涙はもう流さない。
キュウソネコカミ、STAR STAGEに帰還！
昨年はVIVA! STAGEに出演。STAR STAGEに出られなかった悔しさと、キュウソを外してマキシマム ザ ホルモンのステージへ向かうオーディエンスの多さを目の前にし、悔し涙を流しながらもエモーショナルなステージを繰り広げた彼らだったが、今年は3年ぶりにSTAR STAGEへ帰還。リハーサルから“MEGA SHAKE IT !”を、本気で演奏。場内を浮遊している飛行船型のバルーンを落とすと宣言し、ありあまる気合を見せつける。
1曲目”ビビった”から、バンドもオーディエンスもテンションがおかしい。「キュウソネコカミが帰って来たぞ！」と、ヨコタ シンノスケ（Key&Vo）がシャウトする。昨年のライヴでの彼らの涙を見ているだけに、なぜか勝手にこちらまで感情移入してしまって涙が零れ落ちる。「このフェスに来ている全員が全員俺らのファンじゃないことぐらい知ってるよ。好きなバンドを応援し続けろや！」という、ヤマサキ セイヤ(Vo&G)の心からの叫びとともに演奏されたのは、“推しのいる生活”。いや、でも、今この瞬間だけは確実にキュウソネコカミを推さざるを得ない――そのレベルの素晴らしく熱量の高い演奏を叩きつけていく。
攻撃の手を緩めることなく、カワクボ タクロウ（B）とソゴウ タイスケ(Dr)の叩き出すヘビーなグルーヴがヘッドバンギングを誘った“KENKO不KENKO”、「今日のメンツには舐められたくない」というヤマサキの呼びかけに応じてウォール・オブ・デスが巻き起こった“炊きあがれ召し上がれ”を続けてプレイ。ハードコア・パンクからブリティッシュ・ロックを通過して、ポップスまで、めまぐるしく色を変えるキュウソネコカミ流のロックンロール——歌詞やそのステージ・パフォーマンスが注目されがちな彼らだが、やはり根っこの部分は純に心の底から音楽好きなのだろう。
「令和って発表されたとき、日本で一番喜んだの俺やと思います。発表された瞬間、『言いやすい！』……って叫びました（笑）」という言葉に続いて始まったのは、“ギリ昭和”。＜いこうぜその先へ＞と歌い叫んだ後、アリーナ全体で＜令和＞とシャウト！ なんだこのアハ体験というか、カタルシスは。最高じゃん！
「時代が変わっても、ヤツらはいる！」——そんなMCと共に始まった“DQNなりたい、40代で死にたい”。昨年、ヤマサキはこの曲の最中に「本当はロックスターに俺だってなりてぇ！」と、心の底からの願いを咆哮していた。よく見てみれば、ヤマサキは昨年も着用していた「リアム・ギャラガー ロックンロールスター」とプリントされたTシャツを着ている。背中にブリティッシュ・ロックのレジェンドの名前を背負い、オーディエンスの海の上に立ち上がったヤマサキの姿は、今年こそ完全にまごうことなきロックスターそのものだった。
「消えるかもしれんと思ってやってきました。いろんな人にお前らはすぐ消えるやろって言われて、それにムカついて曲にしたりもした。でも全然、まだ消えてないねん！ これはお前らのおかげや！」
「でも、去年のビバラはマジでこのままだと消えるって思った。2年連続でSTARから落ちて、一昨年はパンパンやったけど、去年はホルモンもあってお客さん全然おらんくて、『ああ、消える瞬間ってこういうことなのかも』って思って……マジで、めちゃくちゃ悔しかった。けど、絶対にSTAR STAGEに戻ってやる！ 絶対に消えねぇ！と思って、そっからいっぱい曲作って、今日、ここに立ってるぜ！ これはお情けじゃないと俺は思ってる！」
そうヤマサキが本音を吐露した後、歌い鳴らされた“The band”——＜ロックバンドでありたいだけ ロックバンドでありたいだけ＞、去年は切実な響きを持って歌われたこの歌詞が、今年は力強い説得力と希望の力を帯びてアリーナに響き渡る。「ビバラ一緒に歌おうよ！」という掛け声に導かれ、巻き起こる大合唱。イヤーモニターを外して嬉しそうな顔をして満足げな顔を浮かべるキュウソネコカミの面々。絶対に消えない、消えさせない……そんなオーディエンスの真摯な想いが彼らにも届いたのではないだろうか。
「やりてえ曲やって帰ります。勝手に聴け！ 俺らはロックバンドじゃ、この野郎！」
そう言い放ったキュウソネコカミが最後に演奏したのは“真面目に”。これでいいのかと絶えず自問自答しながらも、結局は真面目にやっていくしか方法はない、そして真面目にやっていれば＜いつか報われる＞——そう強く信じて、進み続けるのだ。
キュウソネコカミは、自らが今いる現実から決して目をそらさずユーモアと真摯さを持って向き合おうと常に戦い続けている。＜いつか報われる＞と信じて歩んできた道のりの＜いつか＞は彼らにとってはもしかしたら今日だったのかもしれない。体全体で彼らの歌に音に反応し、万雷の拍手を捧げるオーディエンスの姿を前に、溢れる涙が止まらなかった。
テキスト＝小田部 仁
セットリスト
1. ビビった
2. メンヘラちゃん
3. 推しのいる生活
4. KENKO不KENKO
5. 炊き上がれ召し上がれ
6. 家
7. ギリ昭和
8. DQNなりたい、40代で死にたい
9. The band
10. 真面目に
撮影＝釘野孝宏
